『天才バカボン』からもメタフィクションとして味わい深い2本を収録。『もーれつア太郎』からはニャロメたちがきわどい食欲を発する「天下の珍味ケムンパス」、赤塚不二夫自身がお気に入りとする『レッツラゴン』も時流に鋭く感応するパロディやブラックな笑いにゾクゾク。
知る人ぞ知る『くそババア!!』は童貞四十路の男と過干渉ママのギャグ……というよりホラーじみた作品で、今読むと40年前以上に発表されたとは思えない生々しさである。
これに比べれば『おそ松さん』の6人そろって実家住まいのニート・非モテぶりなんて、天使のごとき愛らしさだ。
ほかにも、キャラクターが作品の枠を超えて登場する読み切りも収録し、なかでも「あの有名キャラクターは、いま!?」では、作者自身によって『おそ松くん』の六つ子やほかのキャラクターたちの衝撃的なその後が記載されている。
高度なギャグ、エグイ話や下ネタもあり(なので食事のおともには、おすすめしません!)なのに、とても読みやすいのは作者の卓越したセンスやすぐれたキャラクター造形によるものだ。カラー扉絵のビビットな色使いも、アート作品とも呼べる美しさである。
もちろん、赤塚作品にはほろりとくる人情話や、かわいらしいものもたくさんあるが、真髄はやはりギャグマンガである。本作では、そのなかでも濃いものを抽出し、詳細な解説も付属している。生前からのファンも、初心者も満足できる1冊だ。何はさておき、「読むべし」。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。