話数が進んでも、はなやかなデートスポットではなく、2人はあいかわらず、なぜか駅のホームで会話をしている。
東くんの友だちである、彼女持ちのカフェイン君の恋愛相談も、「ミスター平和台」と呼ばれるモテ男・環君の人生相談も、やっぱりここで行われるのだ。単調になりかねないはずが、そう感じさせない。登場人物の微妙な表情の巧みさや、背景のポップな描きこみぶりなど、マンガ構成の巧みさゆえだろう。
高校生たちの理想とされる「リア充」のような表面的なつきあい方は、意外に疲れる。共感だけの女子会の不毛さにも、敏感な少女なら勘づいている。
煙たがられそうな真っ向からの議論を、スマホ上ではなく顔を突きあわせてとことん深く掘り下げてみたい。異色な作品が誕生したのは、今、そんな欲求がみんなのなかにひそかにわいているからではないか。
それでいて女の子が「キュン」とする要素もバッチリ。
東くんの根がマジメで素直な心と、相沢さんの相手を知りたいという女の子らしい気持ちが重なりあう瞬間、ふいにときめきが生まれる。
不器用な恋と青春を描いた『となりの怪物くん』とは違うテイストのコミカルな作品ながら、人と人がわかりあうことの難しさを少女マンガの枠内で表現しているのは、やっぱりろびこ先生!と喝采したくなる。
続く次巻は、学校生活編とのこと。東くんはじつは顔立ちが整っており、相沢さんも美人で憧れの的らしい。そんな2人が一緒にいては、まわりは放ってはおけないのでは?
この一風変わった「トーキングコメディ」がどう転がるのか、電車の音も外野の声も含めて、耳を傾けておきたい。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。