話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『僕だけがいない街』
『僕だけがいない街』著者の三部けい先生から、コメントをいただきました!
『僕だけがいない街』第8巻
三部けい KADOKAWA ¥580+税
(2016年4月26日発売)
時間をさかのぼる“再上映(リバイバル)”の能力を持った主人公が、その力を駆使し、過去に起きた連続児童誘拐殺人事件の真相へと迫る新感覚のクライム・サスペンス『僕だけがいない街』。好評を博した本作が、ついに完結を迎えた。
最終第8巻では、主人公・藤沼悟が真犯人の用意した舞台・山茶花池公園へと乗りこみ、そこで真犯人と対峙することになる。
なお、真犯人の正体は前巻までに判明しているものの、ネタバレに配慮して、本記事では“真犯人”と記すことに留意してほしい。
第8巻でのハイライトは、やはり悟と真犯人が出会う場面だろう。いわば「ラスボスとの対決」シーンだ。
しかし、両者が顔を合わせる瞬間は、バチバチした対立ムードというよりは、どこか互いに待ちこがれたようであり、叙情的でさえある。
そもそも山茶花池公園での出来事は、悟は真犯人の考え方をトレースして先手を打とうとするし、真犯人は悟にだけわかる形でメッセージを送り続け、悟と真犯人のあいだでしか理解できない攻防が繰り広げられていく。
また、悟は真犯人の言葉を心の糧としており、真犯人は悟の“再上映”についての告白を唯一信じてくれる存在となる。