そんな2人は、なかなか距離感がつかめなくて最初はチグハグ。
遅刻しそうな直耶に私が出てから1分待って家出て、一緒に出るのを見られたくないから……という亜麻音の顔が近っ!
テンパった直耶は「もりもり朝ごはん食べてたくせに」とデリカシーのないことを言って自己嫌悪に陥る。
でも、リビングのテレビで同じドラマを見てるうちに打ち解け、ちょっとずつわかりあう。2人は不用意に近づきすぎては反発しあい、またおそるおそる近づく。
このやりとりが、じれったいわ甘酸っぱいわでたまらない。
「姉弟」という設定は、「男女」にならないための一線でもある。直耶の部屋に来て「亜麻音の良い弟になってほしい」といった義父は、どう考えても釘を刺してる。
そりゃちょっとかわいいけど……と意識してしまったら、「ちょっとかわいい女子と一緒に住んでる」という考えが止まらない!
2人はしだいに「家族」になっていく。が、「家族」は必ずしも「姉弟」でなくってもいいと見抜くのが、ただひとりだけ亜麻音に家庭の事情を打ち明けられている親友の郁乃。
なぜ直耶が「弟」じゃなく「男」だと警戒してるのかって? 彼女も亜麻音が特別な意味で「好き」だから。
直耶への牽制のつもりで亜麻音のほっぺにキスしても怒られない、何をしたって女同士のお遊びなんだから……と涙が浮かぶせつなさ。血のつながらない義理の姉弟は結婚できますしね。
ほんのりした百合を交えたゆるやかな三角関係、再婚した両親の「姉弟でいてくれ」という線引き。
恋愛が「白熱」せず「微熱」を保ち、読者にとってはご褒美で、直耶にとっては生殺しの毎日が、末永く続くよう祈ってやみません。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)、『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』、『超ファミコン』(ともに太田出版)など。