しかし、この直也のキャラがじつに魅力的なのである。
偶然にコンビニバイトの同僚となった2人は親しく話すようになるのだが……ののかのカレシ探しを応援すると言ってくれるだけならともかく、結局大晦日までにカレシができなかったののかをカウントダウンに誘ってくれ、あろうことかふいうちのキスまで! キスの理由は「なんとなく」……で、その前後もまったく表情を変えない直也。
ののかをからかっているわけでもなく、ただその瞬間の自分に率直という人物なのだろう。
あ、恋ができるかどうかって、そういうことなんだ。
「この人のこと好きかな?」なんて、頭で考える前に心は動いていて、それに自分が率直に反応できるかどうかがキモなのだと気づかされる。
ののかは引っこみじあんなタイプでもないのに女子とつるんでいるのに慣れすぎていて、共学校通いのくせに男子と接することが少ない。
「好みの人いないかな?」と“恋の対象になりそうな人”を探してキョロキョロしているうちは、たしかにカレシはできないかも!?
見た目は女の子らしくてほわっとしているけれど、意外やバイト先ではシャキシャキ働く、ののかのキャラクターも新鮮。
王道少女マンガを描き続けながらステレオタイプに陥らないキャラ造型にも、著者の真摯な姿勢を感じるのだ。
恋をしたことがないヒロインが、これからどんなふうに“恋”をとらえていくのか。
恋してる喜び、悩み、そしてたくさんのうずまく疑問に出会う道筋が楽しみでしかたない。
ののかを通して“恋”の真理に迫るような作品になっていくのではないだろうか。
★河原和音先生の『素敵な彼氏』をすぐに読みたい!
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<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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