祝福者アグニのもたらした福音が、災厄へと一転してしまう。
また、再生能力という“死ねない”祝福がゆえに、彼の身にも災いが降りかかる。
祝福と呪いが、まるでオセロのように裏返っていくのだ。
集英社が配信するアプリ漫画誌「ジャンプ+」に第1話が掲載されるやいなや、禁忌や残酷描写に注目が集まり話題沸騰となった本作だが、第1話目にして価値観がドラスティックに反転していく様子こそ、われわれ読者をして「このマンガがすごい!」と言わしめた最大の要因なのである。
また、本作はストーリーが予測できないところも大きな見どころだ。
アグニによる復讐劇として物語は進み、そのまま“少年マンガらしい”福音者同士による能力バトルに突入する……と見せかけて、1巻ラストでは思いもよらない展開に。
既存のマンガ文法を十二分に承知していればこその、大胆な“踏み外し”だ。その手法には舌を巻く。
第1話でタイトルを挿入する映画的な演出方法も、ふるっている。
コミックスの帯に書かれた「若き鬼才が放つ巨弾新連載!!」の文字に偽りなし。
『ファイアパンチ』は、われわれの価値観や既成概念に、燃えるような一撃を食らわす作品だ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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