目標である全国大会出場に向け、夏休みも濃密な練習スケジュールを積極的にこなしていく北宇治吹部。そうしていよいよ、顧問の滝が招聘したゲスト指導者も交えて、3日間の合宿がスタートするが、そこでのぞみは久美子に
「コンクールなんてなくなってしまえばいいのに」
と語りはじめる――。
冒頭に書いた藤重率いる活水高校との連想は、前年に府大会銅賞という最低ランクの成績を収めた北宇治の、瀧が新顧問に就任することでの意識の変革と部の躍進は、それとちょうど共鳴するものとして感じられるためだ。
もちろん、活水高校が全国出場を果たした2015年には、原作小説はすでに刊行されていたわけだから、この符合は単なる偶然ではある。
しかしその勝手な妄想をあと押しするかのように、実際コミックス第1巻には、主人公の黄前久美子が、以前から好きだったという吹奏楽強豪校「清良女子(せいらじょし)」のTV番組を観るシーンが描かれてもいただろう(第1巻113頁)。
この高校が、実際に全国大会ゴールド金賞常連である、藤重の前任校「精華女子(せいかじょし)」をモデルにしているだろうことはまず間違いない。
久美子と麗奈の関係にならえば「引力」のように惹かれ合ってしまった両校。でははたして、北宇治高校は瀧の指導のもと、活水高校のように支部大会を突破し、目標である全国へ行くことができるのか。 そして、関西大会での演奏がはじまるのです。
<文・高瀬司>
批評ZINE『Merca』主宰。アニメ/マンガ論を『ユリイカ』などに寄稿。「SUGOI JAPAN Award」アニメ部門セレクター。『アニメ!アニメ!』にて時評を連載中。
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