ある日、ロザリンドの母は娘が殺人を犯す現場を目撃してしまう。母はロザリンドと無理心中をはかるが、幸か不幸かロザリンドだけは命をとりとめる。
妻の死後にようやくすべてを知ったロザリンドの父は、幼い娘を警察につき出すことをためらい、ロザリンドを修道院に預け、一生をかけて罪を償って暮らしていってくれることを望むのだが……!?
おっと、そんなにあらすじを説明されちゃ困ります……という心配はご無用。本作の濃さはこの程度で薄まるものではないし、まだまだ物語は序の口だ。
それにしても、わたなべまさこの描くふわっと柔らかそうな髪、独特の光をたたえた瞳、フリルのワンピースには少女マンガ黄金時代の香りがいっぱいだ。
端正な描線から次々に繰り出される残虐描写は、作品に漂う古典少女文学的な気品とのギャップもあいまって強烈な破壊力である。
作品を通しての被害者は相当数にのぼる。殺人のやり方も多彩、臨機応変にうまい方法を思いつくから怖ろしい。っていうか、これを思いつくわたなべまさこ先生こそ怖ろしい!?
ホラー映画よろしく、読み進めるうちに「この人も殺されるんだろうなぁ」とわかってはいても……その惨殺体のもたらすビジュアルショックは何度見ても鮮烈だ!
ショッキングなホラーでありながら、クライマックスは胸を締めつけられるようなせつなさだ。小さな殺人鬼が哀れでたまらなく、抱きしめてやりたい気持ちになる。
完璧な幕引きが、一級のエンターテインメント物語をより味わい深いものにしている。
1973年、『週刊少女フレンド』に連載され、少女たちを震え上がらせたサイコ・サスペンスホラーの大傑作がこのたび新装・完全版で「このマンガがすごい! comics」で復刊した!
しかも冒頭には新たな描きおろしページが挿入されているから、旧版を大切に所蔵していたファンにとっても見逃せない大事件といえよう。
若い世代にも読み継がれるべき名作の復刊を心から祝福したい。
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<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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