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『あの娘にキスと白百合を』 第6巻 缶乃 【日刊マンガガイド】

2017/05/10


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『あの娘にキスと白百合を』

  
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『あの娘にキスと白百合を』 第6巻
缶乃 KADOKAWA ¥550+税
(2017年3月23日発売)


舞台は中高大一貫校の女子校・清蘭学園。
天才で人に興味がない黒沢ゆりねと、彼女をいつもライバル視している品行方正な白峰あやかの2人の関係を軸に、様々な少女たちの、友情・恋愛・出会い・別れを描く百合群像劇だ。
登場人物は、依存体質気味に好き同士になってしまったり、先輩に強い憧れを抱いていたり、幼い頃の約束を追いかけていたり、独占欲が強かったりと、千差万別。
第6巻では表紙にあるように、2人のカップルではない、ちょっと変わった組みあわせの話が描かれる。

クールに見えて友だちがほしいさみしがりやの、比留間諒(ひるま・りょう)。
大人っぽい雰囲気ながらも感情的な夕凪仁菜(ゆうなぎ・にな)。
ふわふわしていて、だれにでも「好き」だといえてしまう朝倉亜麻袮(あさくら・あまね)。
特に仁菜の激情は、ほんわか百合が多いこの作品において、今まで出てきたキャラクターのなかでも1、2を争う。
カッとなって諒をゴミ置き場に突き飛ばすことまでする。

亜麻袮もかなり特異なキャラクター。基本的に、好きなひとりの相手とどう距離を取ろうか悩むのが、今までのほかの少女たち。
亜麻袮は、たくさんの人を並列で好きになりたい。 学校で“大切な人ひとりに赤いリボンを巻いた花を渡す”というブームがあった時、彼女は2本も3本も準備していた。
価値観の相違をすり合わせて3人がたどりついた結論は、百合マンガとしても珍しい考え方だ。

亜麻袮は、赤いリボンの花を伊澄という、ちゃらんぽらんな少女に渡している。
伊澄は先輩であるしっかりものの千春と好き同士。
千春は元気いっぱいで明るい愛と友だち。
愛はあまり人と話さないゆりねに声をかけて仲よくなった……と、登場する女の子たちは、どこかしらで地続きになっているのがおもしろい。

物語はカップルごとに切り分けられてシャッフルされているものの、必ず話のラストに“つづく”の文字が入る。
女の子たちのつながりは、物語のヒロインとしての山場はあるけれど、そこで終わる訳じゃない。
ほかの子ががんばっている時、見えないところで彼女たちも引き続きがんばっているのだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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