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『大正ロマンチカ』第9巻 小田原みづえ 【日刊マンガガイド】

2015/07/08


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『大正ロマンチカ』第9巻
小田原みづえ 宙出版 \619+税
(2015年6月1日発売)


金髪碧眼でプレイボーイの公爵様・レイヴィスのところにやってきた娘・滝川明(たきがわ・めい)。
レイヴィスが日本にいる間だけのかりそめのパートナーだったはずが、いつしか本当の恋に落ちた2人。

しかし明の前には、身分の差という大きな壁が立ちはだかっていた。
明はレイヴィスに似合う女性になるための特訓を続けているが、そんな彼女の前に、レイヴィスの政略結婚の相手・エリーゼが現れ、生活をともにすることになる。
レイヴィスとエリーゼのやり取りに、小さな胸を痛める明だが――。

第9巻でレイヴィスと明、そしてエリーゼは、レイヴィスの祖国・大英国へと渡航する。
レイヴィスの城に滞在中も、上流階級にふさわしいマナーのレッスンを、自分で必死に続ける明。
そのけなげな行動の一つひとつに、明がどれだけレイヴィスを想っているのかが手に取るように伝わってくる。

小田原みづえの魅力はやさしい絵柄とコマ運びのうまさ、そしてなんといっても表情の巧みさだろう。
明の、幸せにあふれた笑顔はもちろんのこと、いってらっしゃいとレイヴィスを見送る表情の微妙なニュアンス、レイヴィスの城で彼にまつわるものを見つけた時の、夢見るような憧れるような、言葉にできない想いにあふれた表情……。
効果的な大ゴマ、ネーム運びもすばらしく、マンガとしての完成度が非常に高い作品だ。

前巻である第8巻では、レイヴィスの仕事を手伝う修復師の総二(そうじ)と、総二の亡父の妻である幼なじみの栞(しおり)が、困難を乗り越えて想いを実らせた。
そのほかにもこの作品には、障害のある恋愛を果たした先達がいる。
だから、読者は祈ってしまうのだ。
明の痛々しいまでのレイヴィスへの想いを知り、そして宝物以上に明を大事にしているレイヴィスを見て、2人がすべてを乗り越えて結ばれますようにと。

とはいえ、そう簡単にハッピーエンドへいくわけではなさそうだ。
明とレイヴィス、2人の前には様々な試練が、いろいろなかたちで現れてくる。
浅井藤間(あさい・とうま)と名乗る、明を手に入れようと企む謎の男。
レイヴィスに提示された、シビアなタイムリミット。
はたしてこれからどうなるのか、それをどう著者が見せて、いや魅せてくれるのか、非常に楽しみだ。

さてこの作品には、様々なアンティークが登場する。
父親が著名な贋作者であった明の、見事なアンティーク解説もこのマンガの見どころのひとつだが、今回の目玉は18世紀のレース編み。
作中での使われかたも非常に印象的。ぜひ、その目でお確かめください。



<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」

単行本情報

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