話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『タイムスリップオタガール』
『タイムスリップオタガール』著者の佐々木陽子先生から、コメントをいただきました!
『タイムスリップオタガール』 第1巻
佐々木陽子 ほるぷ出版 ¥600+税
(2017年1月15日発売)
「人生やり直しもの」が人気を呼んでいる。というより、エンタメ作品における、永遠のテーマではないだろうか。
主人公には、たとえばはっきりした後悔があったり、現状に満足していなかったり、というケースが多い。
しかし、『タイムスリップオタガール』の城之内はとこは、地方の実家暮らしでスーパーのバイトの30歳ながら、腐女子としてそこそこ今の人生を楽しんでいた。
ちなみに、語尾(モノローグの)には「ござる」、笑い声は「フヒヒ」系……と、なかなか濃くてイタい感じのアラサーオタク女子である。しかも美化ナシのリアルな姿だ。これを描ききる作者の手腕をまず評価したい。
そんなはとこは、突然、事故で命の危機にさらされ(その状況下でも、買いたての同人誌を守ることを最優先した)何度かの短期間のタイムスリップを経験したのち、1996年、中学2年生に戻ってしまう。
「身体軽くない?」、「働かなくても良いでござる~!」などと超ポジティブに喜んだのもつかの間、30歳まで大事に集めたオタクグッズのいっさいがっさい、なかでも入手の難しい同人誌がすべてない、という事実に気づいて戦慄する。そりゃ、オタクなら想像するだけでも震えるわ……。
それでも、探れば出てくるアニメグッズにノスタルジーを禁じえない。
そう、あの頃のオタグッズって、今みたいに小じゃれたものなんてなかったよな、情報を得るにも不便だったわ、と読む方もタイムスリップ気分にひたってしまう。