皆さんは「河鍋暁斎(かわなべ・きょうさい)」なる人物をご存じだろうか?
昨年、当サイトでもご紹介した「このハンガがすごい!2016」オトコ編首位の浮世絵師・歌川国芳にも学んだという、いまニッポンの絵画界で大いに気を吐く大・大・大ブレイク中の絵師だ。
うわさによると、あの大人気アニメ『けものフレンズ』や『妖怪ウォッチ』、さらにはあの映画『シン・ゴジラ』の大ブレイクまで、この河鍋暁斎がからんでいる、というのだ。
わーい、すごーい♪
今回は、それほど多大な貢献をしている(らしい)マンガ界のフレンド・河鍋暁斎が現代日本マンガの世界におよぼした影響の数々を検証してみよう!
ここは「きょーさいちほー」!? マンガの定番「擬人化」を実現
暁斎の師匠・国芳は無類のネコ好きだったそうだが、暁斎が得意としたモチーフは「カラス」。
先日東京・上野公園で開催された「第2回内国勧業博覧会」において「この水墨画がすごい!1881」カラス編の第1位を獲得したのも、暁斎の「枯木寒鴉図」だ。
その後も、カラスはもちろんサギ、ネコ、カエルとモチーフは多岐にわたり、これらのすべてが盛りこまれたのが『動物の曲芸』である。
河鍋暁斎 《動物の曲芸》
明治4~22(1871~1889)年 紙本着彩
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London Photo :立命館大学アート・リサーチセンター
ネコとネズミが人間のようにアクロバットを披露している。
じっと見つめていたら、おや、なんだか声がきこえてきたぞ……
「つなわたり、たーのしー♪」
「はしごのりできるなんて、すごーい!」
「きみは、タイコがたたけるフレンズなんだね!」…………
のんきに踊るコウモリや空中ブランコにぶらさがるモグラ(右上)をはじめ、ゆるーくお祭りを楽しんでいる動物たちは、目つきのするどいサーバルちゃん……まるで『けものフレンズ』のフレンズたちのようだ。
……そう、鳥羽僧正の『鳥獣戯画』から受けつがれた擬人化のテクニックは、『けものフレンズ』に至るまで脈々と受けつがれているのだ!
河鍋暁斎 《家保千家の戯 天王祭/ろくろ首》
元治元(1864)年 大判錦絵
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London Photo :立命館大学アート・リサーチセンター
擬人化は動物だけに限らない。
暁斎は「畑狂人」という人を食ったペンネームで、人が食うはずのカボチャの擬人化マンガを描いている。
祭りのにぎわいのなかにいるカボチャ人間、ツルの首が長くのびたカボチャの妖怪「ろくろ首」とカボチャ人間の躍動感を見ているうちに、またもやこんな声が聴こえてはこないだろうか?
「カボチャのおみこし、たーのしー♪」
「くびがのびるなんて、すごーい!」
「きみは、くびがながーくのびるフレンズなんだね!」…………
こっちは『けものフレンズ』を超えた『やさいフレンズ』のようだ。
先日最終回をむかえた『けもフレ』の次回作を『やさフレ』にという予言というべきであろう。
妖怪を描く……これがホントの「暁斎ウォッチ」
人の目に見えないもの、すなわち「妖怪」すら描くのもマンガならでは。
暁斎は、「百鬼夜行」もテーマに選んでいる。
河鍋暁斎 《百鬼夜行図屏風》
明治4~22(1871~1889)年 紙本着彩、金砂子
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London Photo :立命館大学アート・リサーチセンター
屏風上段の右から左へ、さらに下段の右から左へと展開する「百鬼夜行図」だが、オリジナリティあふれる妖怪がワイワイやっている様がダンスを……いや、「よ●かい体操第一」を踊っているように見えないだろうか?
目を上方に向けると空中を浮遊する妖怪は「ウィッス」といいそうだし、器物が変化した妖怪のなかにはジバニャンらしきものが見えてくる……気がする! いや、見えてくる!
暁斎の手によって屏風サイズに巨大化した「百鬼夜行」こそが、「妖怪ウォッチ」のモデル! いや、「妖怪ウォッチ」そのものといっても過言ではない。