『喧嘩稼業』第2巻
木多康昭 講談社 ¥565+税
(2014年9月5日発売)
2010年9月の休載から幾星霜……というのは少し大げさだが、多くの読者が「もう連載再開は無理なんじゃ……」と思っていたのは事実なのでは。
『幕張』で知られるギャグ漫画家・木多康昭が描く格闘絵巻として話題になっていた『喧嘩商売』が、昨年12月よりタイトルを『喧嘩稼業』と変えて連載再開! しかも、著者が得意としてきた下ネタ・時事ネタ・楽屋ネタのギャグを(ほぼ)封印した、これまで以上に純粋な格闘マンガとして!
今年4月に発売された単行本第1巻は、戦いのリ・スタートを待ち望んでいたファンから大きな支持を得て、『このマンガがすごい!WEB』の6月ランキングにて、オトコ編の第6位に見事ランクインした。
最新2巻では、日本人最強を決定する「陰陽トーナメント」の出場権を手に入れるため、主人公・佐藤十兵衛が変態ドMヘビー級ボクサー・石橋強に挑んだ「喧嘩」が展開される。
血と汗、さらには精液(!)や噛みちぎられた指までもが飛び散るタブーなしの木多流バトル描写は、長期休載のブランクをまったく感じさせない。
本作がほかの格闘マンガと一線を画するのは、思わず読者が「卑怯すぎる……!」と絶句してしまうような、主人公やライバルたちの策略。
その丁寧な思考描写は、それだけ見れば「リアル」からは程遠いようにも感じられる設定・展開すら、本作を「リアル格闘マンガ」として成立させるパスルのピースに変えてしまう。「実」のなかに「虚」が入り混ざった変幻自在の頭脳バトル描写は、まるで作中で十兵衛が戦いにおいて多用する、ブラフとハッタリのようでもある。
十兵衛vs石橋の死闘は次巻で決着を迎え、物語はついに陰陽トーナメントに突入する模様。
すべての格闘マンガファンが考える「最強の格闘技とはなにか?」という問い。その答えの一端を、本作が示すときは近い!
<文・四海鏡>
石ノ森章太郎ファンのライター。好きな石ノ森作品は『番長惑星』など。ネオライダー世代。