『脳内ポイズンベリー』第4巻
水城せとな 集英社 \419+税
(2014年9月25日発売)
『失恋ショコラティエ』、『窮鼠はチーズの夢を見る』などで知られる水城せとなが月刊誌「Cocohana」に連載している作品の第6巻。
なんと次巻が最終巻となるということだが、話の結末がまったく見えない。
登場人物は、主人公の櫻井いちこと、その恋人となる年下の早乙女亮一。いちこと亮一がすれ違っている間に、いちこと交際・結婚しようとする越智(おち)が割りこんできて……という、シンプルな三角関係のお話なのだが、いちこの「脳内会議」が読者に丸見えになっているのが作品の特徴。
もともと特定の読者の共感を呼び起こすのが得意な水城だが、登場人物の脳内に複数の人格を設定して紛糾させることで、より複雑な「共感」を生み出していると言える。
あるいは、本作ではもっと進んで、「共感」を呼び起こしていると見せかけて、その共感の構造を可視化するという、ラディカルな試みに打って出ている、とも考えられるだろう。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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