日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ふろがーる!』
『ふろがーる!』 第2巻
片山ユキヲ 小学館 ¥552+税
(2016年7月29日発売)
生実野早夜子(おゆみの・さよこ)は東京・中野のハヤタ食品で働く25歳のOL(出身地は神戸なので、口調は関西弁)。仕事ぶりはスピーディーで頼れるタイプ。
しかしクールビューティな雰囲気もあり、同僚たちにとっては、ややとっつきにくい存在だ。そんな生実野さんが、ひそかに楽しみにしていること。それはお風呂だった――。
ベテラン・片山ユキヲが朗読の世界を描いた『花もて語れ』の次作に選んだテーマは、ズバリお風呂! 入浴にとことんこだわるOLの日常を、1エピソード8ページでキュートに描いている。
初期は自宅(木造アパート)の小さなお風呂で様々な入浴術を楽しんでいた生実野さんだが、バイクの中型免許を取得してからは、あちこちの銭湯や温泉へ遠征に出かけるようになる。
教習所で知りあったシロー(注・女性です)というバイク&入浴仲間もできて、じつに楽しそうだ。
この第2巻でも、シローとともに御殿場や日光など、お風呂目的のツーリングへ出かけるアクティブな生実野さん。実生活でも経理から営業へと異動となり、外回りの日々。
仕事は内勤、趣味は自宅入浴というインドア生活からガラリ一変である。
さらに異動先の女上司・冬馬さんとも社員旅行の露天風呂でうちとけ、休日のツーリング仲間にお誘いするという大胆な行動も。
いろいろなことに、どんどん積極的になっていく生実野さんを見ていると、こっちまでうれしくなってくる。
当然ながら若い女性の入浴シーンが多々描かれるのだが、男性読者への過剰なサービスはいっさいなし(女性キャラは全員スタイル抜群で色っぽいけどね)。
生実野さんの恋愛エピソードなども挿入されず、ストイックな入浴道で勝負しているのが◎。
よけいなノイズを排除し、“湯女子”の生態を純粋に楽しめるように配慮されているのだ。
まさに「看板に偽りナシ!」で、お風呂の友にもピッタリ。
湯船につかりながらページをめくれば、いやし効果倍増ですよ。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。今秋公開予定の内村光良監督『金メダル男』の劇場用プログラムに参加しております。