日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『浮浪雲』
『浮浪雲』 第112巻
ジョージ秋山 小学館 ¥552+税
(2018年1月30日発売)
「ビッグコミックオリジナル」にて1973年(昭和48年)にスタートし、昨年、超長期連載を終えた『浮浪雲』の完結巻。
舞台は幕末の品川宿、ちょんまげを前髪で結んだ雲(くも)を中心に、44年間、様々な庶民のドラマが展開。
ジョージ秋山の代表作となり、1978年には渡哲也と桃井かおりのコンビで、1990年にはビートたけしと大原麗子のコンビでテレビドラマ化、1982年には劇場アニメ版も公開された。
一応、雲助(駕籠かきに関わった人足)をたばねる社長ではあるがほとんど仕事はせず、女の着物を着流し、店の金をくすねて女郎部屋へ通う根っからの遊び人。
もともと武士であり腕に覚えはあるが、決して勧善懲悪のヒーローではない。
何をいわれても「どっちでもいいですよ」と暖簾に腕押しで飄々としているのに、人を引きつけてやまない魅力にあふれている。
そんな雲は自由の象徴であり、男の憧れだった。
集大成というより、じっくりとフェイドアウトしていく味わい深い最終巻は、品川宿中の女に捨てられ、海でさみしく釣り糸をたらす雲の姿が印象的。
やがて彼は忽然と姿を消してしまう。
それでも大慌てしないのが妻のおカメであり、息子の新之助であり、品川宿の女たちだ。はたして雲は神隠しにあったのか?
「おねえちゃん、あちきと遊ばない?」
今でもオリジナルを開くと、おなじみのフレーズを探してしまう自分に気づく。
さみしいけど、今日も青い空のどこかに、はぐれ雲は漂っている。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。