『強豪野球部新入部員のありがちな日常』第2巻
スズキイッセイ 双葉社 \620+税
(2014年11月10日発売)
全国大会が国営放送で中継され、その一生懸命な姿に全国民が感動する……。
高校球児のイメージは爽やかそのものだが、私たちが知っているのは彼らのほんのごくごく一部。元高校球児の作者が描く本作こそ、その真実をリアルに伝えるものである!
タイトルからギャグマンガと誤解する方もいるかもしれないが、単なる「あるあるネタ」には終わらない。
「うまくなりたい」、だけど「こんなキツい部、やめてしまいたい」。「試合に出たい」「サボりたい」「スタメンになりたい」「だれも蹴落としたくない」……さまざまな本音と葛藤が渦巻く新入部員たちの気持ちを活写。
笑える箇所も多々あるが、みんなのお荷物扱いされながらもがんばり続ける選手、思い描いていた青春像と現実の違いを感じつつも部員をバックアップする女子マネたちなどなど、血の通った登場人物たちにいつしか深く思い入れてしまう。
筆者はかつて、「元・高校球児」の著名人たちの連続インタビューを担当したことがあるが、「高校時代いちばん思い出に残るシーンは?」と尋ねると、決まって返ってくるのがこんな答えだった。
「練習の途中にこっそりサボったこと」「練習帰りに先輩の目を盗んで仲間とコンビニで買い食いしたこと」
日常のなんてことのない場面こそが、じつは彼らにとって青春の記憶になりえている。本作はそんな風景を垣間見せてくれる、新しい野球マンガだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」