『謎の彼女X』第12巻
植芝理一 講談社 \581+税
(2014年11月21日発売)
「椿明が生まれて初めてSEXする相手である」
――ヒロイン・卜部にドキドキの声が聞こえてから、10年の歳月が流れた最終巻、キスもせずに終わった『謎の彼女X』。
作者も予想もしてなかった(考えが変わったらしい)結末だけれど、キスよりも濃い"日課"が続いた10年でした。ヨダレの交換って、体液が混じり合うわけで、キスより深い関係なんじゃ……?
無口で無愛想でボサボサ髪で目は隠れ、パンツからハサミを抜き放ってジョキジョキ。
「オトコにとって永遠に謎である女の子」そのものだったヒロイン・占部でしたが、恋愛はお互いさま。グラビアアイドルで頭がいっぱいの彼氏の心を奪い返すため、路上でワンピースをジョキジョキして水着姿に……なってから焦って袋から取り出した服を着る。謎よりも恋するドジっ娘成分がマシマシです。
卜部も「孤立した変わり者」から「友達のいる変わり者」になり、サブキャラたちもそれぞれの恋を見つけ、椿の姉さんも2人の仲を公認。
そこでグッとこらえて「高校生の間は今までのままでいいんじゃないかなあ」と我慢した椿の優柔不断は、勇気ある決断。そうそう「キスする恋人」なんてつまんないもの、いつでもなれるよ!
オマケの元ネタ公開は、驚きの嵐。タイトル『謎の彼女X』がイギリスのSFドラマ『謎の円盤UFO』から、ということは察しがつくが、椿明(つばきあきら)がヨダレ=ツバキではなく、黒澤明監督の『椿三十郎』にちなんでいたとは。上野公平×丘歩子カップルの元ネタも、特撮マニアの作者らしいとナットク。
巻末の『謎の彼女Xロボ』も、東映特撮ファンは必読だ、マ゙ッ!!
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。