『女一匹シベリア鉄道の旅』
織田博子 イースト・プレス \1,100+税
(2015年1月17日発売)
「女ひとり異国もの」といえば、いまやコミックエッセイの立派な1ジャンルとなった感もあるが、東條さち子『よくばり世界一周』や沼津マリー『インドでキャバクラ始めました(笑)』を筆頭に、その多くは著者自身がどんだけ~な異国トラブルに奮闘する様が見どころである。それに対して、本書の旅はいたってスムーズで平和。
そんな旅行記、読んでて楽しいの? と思ってしまいそうなのだが、イイ意味で旅ズレしてない著者のピュアな眼差しと語り口が、旧共産国圏のノスタルジックな風景や人々の素朴な人柄とあいまってホッコリ、なごませる。
OLを辞めてシベリア鉄道の旅に出た著者だが、現在はイラストレーターとして活躍されているようで。淡いパステルカラーで彩られた(なんと豪華オールカラーなのだ!)ガーリーな絵世界は、ウェス・アンダーソン『グランド・ブタペスト・ホテル』にも通じる感じ。
ながめているだけで目に楽しく、ノンフィクションにも関わらず絵本さながらファンタジックな郷愁をかき立てられる。
実用目的はもちろん、ヴァーチャルトリップ派にもうれしい1冊なのだ。
本書では詳しくは描かれていないが、織田さんはこのシベリア鉄道の旅で北欧やヨーロッパ、中央アジア、中東、南アジアも旅されたよう。
その様子を描いた続編も希望!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69