『主婦を休んで旅にでた よくばり世界一周!』下巻
東條さち子 朝日新聞出版 ¥980+税
(2014年10月7日発売)
アラフォー主婦漫画家が「いつやるか? 今でしょ!」と仕事を前倒し&借金、小6の娘を旦那に託して、いざ念願の世界一周旅行へ出発!
先進国中心だった上巻に対し、下巻はアフリカ大陸、南米など、発展途上国が中心。
ガラパゴス諸島やアマゾン、インカ遺跡など、感動必至の名所名跡も登場するが、やはり痛快なのは、その国ならではの人々のリアルな暮らしぶり、日本では思いもよらないトラブルのエピソード。
なんせ、エジプト到着1日目から空港で荷物をなくし、タクシー運転手とケンカして見知らぬ土地に捨てられ、ホテルで客引きのおっさんに免税店を連れまわされビザを使われ、ようやく夜に解放されたと思いきや、滞在中、ずっと謎のエジプト人につきまとわれる見事な災難っぷり。
このエジプト人ハッサンに、モロッコのカリマとユースフ兄弟、イスラエル人ガイドのダニーなど、キャラの濃ゆい人々が
サイコー。「善人/悪人」では割りきれない、日本人の理解を超えた言動の数々に「国民性の違い」って深いな~と驚き、心打たれる。
「平和ボケした日本人」が事件に巻き込まれることも少なくない海外で、行き当たりばったりで誰にでもホイホイついていくさち子さんには、危なっかしい面も多々あるが、ガードが堅すぎても、こんな体験はできないよなあ~と。
「迷った時はやめる言い訳を探すより、実現させるための方法を考えるのが私のモットーです」という彼女の他の体験ルポを見ると、ビンボーなのに廃墟同然のアパートを買って不動産投資したり、娘をインターナショナルスクールに通わせたり。世界一周に劣らない冒険を次々にやってのけてきた強者のようで……。
どんな状況下でも、この人なら笑ってネタにして生きていけそう。
世界一周も無事(!?)終了ということで、お次はどんなネタで呆れ、楽しませてくれるのか。まだまだ期待!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69