『手相占いであなたの幸せ引き寄せます！』
卯野たまご KADOKAWA/メディアファクトリー \950+税

日本占術協会が9月9日を「世界占いの日」に制定したのは、1999年の9月9日。じつはこの日は、ノストラダムスの予言する「終末の日」。さらには1999年9月9日の数字を全部足すと46になり、4と6を足せば「完成」を意味する「10」になる……そんな制定のいわれも、さすがは占術師の発想とうならされる！
また9月9日は「重陽の節句」であることも制定の理由のひとつ。中国では奇数（陽）は縁起がよいとされるが、なかでもいちばん大きい数が重なる、とりわけおめでたい日なのである。

占いをどう受け取るかについてはだれでもそれぞれに自説を持っていると思うが、しかし、日々私たちの身のまわりには占いがあふれていることは、ひとつの回答ではないか。
『手相占いであなたの幸せ引き寄せます！』は、ある日路上で占い師にスカウトされた女性が、当初はまったく乗り気でなかったにもかかわらず、翌週から占い師デビューを果たすという実話コミックエッセイだ。

じつは、彼女をスカウトした占い師は、相当なVIPを顧客に持つほどの人物。その適性を見抜く目はホンモノで、作者は師匠の“おじい”にコツを教わりながらもほぼ本人の資質で実力を上げていく。手相がしゃべりかけてきたり、お客さんの書いた名前の漢字が動き出したりと、不思議なエピソードも満載だ。そんな能力も、作者の「困っている人の助けになりたい」という誠実な人柄に付随しているように思えてくる。
かくして作者は10年間、のべ2000人を無料で見た伝説の占い師といわれる存在に。「あれ、無料で見てたら本人に見返りはないじゃん？」と思ってしまうところだがご安心あれ、占い師になったことで彼女にも多くの変化が現れる！

自分に向き合うこと、気持ちの持ち方がどれほど人の運命に影響を与えるのかを改めて実感。いい具合にテキトーでほんわりした“おじい”と作者のやりとりにも示唆に富む言葉がいっぱいだ。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」