『まんが家さんの修羅場めし』
奥原まむ リイド社 \815+税
(2014年12月25日発売)
「追われてくると、ストレス発散って『食』しかないんですよねー」と語るのは、アニメ『超時空要塞マクロス』のキャラクターデザインでも知られる漫画家の美樹本晴彦。
この本に出てくるのは、まさに〆切り修羅場をくぐり抜ける漫画家ばかり。遊びにいく余裕などなく、食べることに楽しみを見出すのは当然だろう。
ただし、限界だとそれすらできない! そんな漫画家たちへのインタビュー集だ。
たとえば『極道めし』で有名な土山しげる。
裏社会漫画を週刊でかけもちしていた時期、過労で入院。病院食があまりにもおいしくなくて「退院したら食マンガを描いてやるー!」と一念発起。今は日本でも屈指の食漫画家。
『ベルサイユのばら』の池田理代子は、週刊24ページをこなすためにどうしたかというと、ひたすらお茶漬け。噛む時間がもったいないからだという。
これがたたって貧血になり、病院に運ばれた。以来、ごはんが作れるアシスタントを採用していたそうだ。
食事の様子を追っていくと、漫画家というかえのきかない職業の修羅場がいかに過酷か、ジリジリと伝わってくる。
さいとう・たかをは月産600ページを執筆。60時間描いて、4時間寝て、また48時間描くという修羅場が、57年続いている。
『おとりよせ王子 飯田好実』の高瀬志帆は、仕事中に破水、でも原稿は落とせないから陣痛の合間にペン入れをしていた。もう食べ物関係ない、極限との戦い。
カレー好きのカラスヤサトシや、中国嫁の料理がおいしい井上純一など、ちゃんとしたレシピもいくつか載っている。
しかし全体的に、人間の生活とはいえないような修羅場が、あまりにも印象に残りすぎる1冊だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」