講談社漫画文庫『トッキュー!!』第1巻
小森陽一(作)久保ミツロウ(画) 講談社 \933+税
“海の「もしも」は○○○番”と言えば、何番?
その答えは、118番。
これは日本の海上における事件・事故の緊急通報用電話番号で、海上保安庁に繋がるもの。この番号の周知活動として、海上保安庁は同じ数字が並ぶ1月18日を“118番の日”に制定している。
海上の不発弾や機雷の発見、密航・密輸の取り締まり、不審船や海上環境事犯への対処もその仕事としている海上保安庁。こうした事案の通報先も118番だが、なかでも緊急性が高くなってくるのが、海難事故。
そこにおいて重要な役割を果たしているのが、『トッキュー!!』でも描かれた、レスキューのエキスパート集団・特殊救難隊だ。
特殊救難隊というのは通称で、正式名称は第三管区海上保安本部羽田特殊救難基地。この基地所属の36名の隊員たちを総称して、特殊救難隊=トッキューと呼んでいる。
全国どこにでもヘリで駆けつけ、その潜水技術とレスキュー技術で、通常の潜水士では対処できない海難事故の救助にあたる。『トッキュー!!』では、新米潜水士・神林兵悟がそんな特殊救難隊の一員となって、高みを目指して奮闘する姿が描かれている。
原作は、佐藤秀峰『海猿』の原案も務めていて、『海上保安官になるには』という著書も持つ小森陽一。
そしてマンガを手掛けるのは、『3.3.7ビョーシ!!』、『モテキ』、『アゲイン!!』の久保ミツロウ。
特殊救難隊はじめ、海上保安庁の活動と活躍に触れられるだけでなく、さまざまなキャラクターとドラマが絡みあうお仕事もの、青春ものとしても魅了される作品になっている。久保ミツロウのキャラ作りのうまさと描き分けの巧さは、お見事の一語!
日々、過酷な訓練と業務に精進し、自問自答もありながら海の安全のため、今、危機にさらされている人のため、最前線に飛び込んでいく海上保安庁の面々。
その仕事と118番に思いをはせながら、ぜひ本日の一作として『トッキュー!!』を楽しんでみては?
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。