東京の中央部をぐるりと回る山手線の五反田駅は、東京都南部の大きなビジネス街、繁華街、風俗街に面した街で、ひとことで言えば“大人の男の街”だ。
そんな街だから、あまりマンガとは縁がないのかと思いきや、五反田ならではの売れ筋がどうやらちゃーんとあるようで……。
今回は、五反田駅西口ビジネス街の一角にある「あゆみBOOKS 五反田店」の副店長・太田和成さんに、五反田のビジネスマンがチェックするマンガを教えていただいた。
あゆみBOOKS 五反田店イチオシの3冊!!
『さよなら、またあした』 松本藍
『さよなら、またあした』
松本藍 太田出版 \900+税
(2014年11月13日発売)
ドMの女子高生・和輝が変な書店員・上田武彦と出会ってしまう物語なのですが、執筆するにあたって、当店が取材に協力させていただきました。
基本はラブストーリーなので、上田の仕事がクローズアップされることは少ないです。
ただ、作者の松本藍先生ご本人が実際に書店員の仕事ぶりを取材されたので、上田のちょっとした行動などに、本屋でお仕事した経験がある人は「あるある」と共感していただけるのではないでしょうか?
『五反田物語』 青野春秋
『五反田物語』
青野春秋 小学館 \552+税
(2013年5月30日発売)
『俺はまだ本気出してないだけ』の作者による、なかば自伝ともとれる作品です。
地方から上京した青年・ハルがバイト先の先輩におごってもらった風俗店で出会った女性・美心(みしん)とつきあうようになって……。
彼女と出会ったラブホテルや、彼女の自宅が五反田にあるということで、タイトルにも「五反田」という文字が入っています。
五反田にある当店ではとくに、本作を手に取るお客様が多かったように感じます。
こういう風俗がらみの作品によく名前が出てくるのも、五反田ならではでしょうね。
『匿名の彼女たち』 五十嵐健三
『匿名の彼女たち』第2巻
五十嵐健三 講談社
(2014年5月2日発売)
風俗通いが趣味という中堅商社勤務のサラリーマン・山下貴大が、行く先々の風俗嬢との出会いを描いた本作。
日本国中の様々な場所にある風俗店が描かれていて、「風俗版 孤独のグルメ」とも呼ばれているようです。なかには、五反田が登場するエピソードが収録されていますよ。
このほかの五反田を舞台にした作品だと、ツイッターのつぶやきから生まれた>『ラブホの上野さん』も人気があります。
つぶやいているのは本当の従業員と思われる人で、マンガでは架空のホテル「五反田キングダム」のスタッフということになっているのも、当店で人気が出ている理由のひとつかもしれません。
こちらはお仕事ものというより、恋愛テクニック講座みたいなお話で、いろいろためになることが描かれているので、男性でも女性でも楽しめると思います。
『フリンジマン』が好きな方にもおすすめですよ!
番外イチオシ
『ゴールデンカムイ』 野田サトル
『ゴールデンカムイ』第1巻
野田サトル 集英社 \514+税
(2015年1月19日発売)
「五反田」とは関係ありませんが、今かなり勢いがあるのが本作。
連載時から気になっている作品で、第1巻の発売を心待ちにしていた作品です。
明治末期の北海道を舞台に、埋蔵金塊を狙う元軍人・杉元佐一と、父を殺した犯人を追うアイヌの少女・アシリパの旅を描いています。
本土の人間である杉元がアシリパと出会ったことにより、アイヌの風習に触れる、一種のカルチャーギャップ描写が見ものです。特に食慣習の差には、自分自身も驚かされることが多々あります。
2月19日発売の第2巻も楽しみです!
『ちおちゃんの通学路』 川崎直孝
『ちおちゃんの通学路』第1巻
川崎直孝 KADOKAWA/メディアファクトリー \552+税
(2014年9月23日発売)
遅刻しがちな女子高生・三谷裳ちおが登校する様子を描く、ただそれだけの作品。
……なんですが、通学路に毎回“難関”ができていて、それをいかにしてクリアするかを描くコメディマンガです。
いつも利用している近道が工事でふさがっていたり、突然の尿意におそわれたりと、様々なシチュエーションで展開する通学路の障害を、ちおちゃんがなんとか――たまに強引に(笑)、機転をきかせて取り除いていくのがおもしろい。
くすっと笑えるようなマンガをお求めの方には、ぜひおすすめしたい作品です。