『猫まち主従』第1巻
玉置勉強 講談社 \600+税
(2015年2月9日発売)
玉置勉強の3冊連続刊行の第1弾となる今回の『猫まち主従』。
続く2冊は『ちっくたっく』(2/20発売予定)、『親父の愛人と暮らす俺』(第2巻、2/24発売予定)。
『東京赤ずきん』や『彼女のひとりぐらし』など、リアリスティックで怜悧なタッチと、独特の酷薄なエロティシズム、そして妙に嗜虐的なギャグセンスが魅力の玉置勉強だが、今作は、擬人化された猫が暮らす日本のような国の物語。
血統書つきの貴族から、去勢ずみの最下層民まで階層化された階級社会が本作の特徴だろう。
作品の主人公は、この社会でどうやらかなりの権力をもつ家柄の貴族に生まれた「ダオ」と、その付き人で去勢猫(つまり最下層民)の「クロスケ」の2人。
階級社会に疑問を持ってひとり暮らしをしようとしたダオだが、クロスケなしにはまったく生活ができない。クロスケに頼りきってくらすダオだが、言動は上流階級そのもので、当初はぜんぜんひとり暮らしになってない!とクロスケからも突っこまれている。
庶民の生活、生活の現実を知らない箱入り娘が、小さなトラブルを引き起こしながら生きていく、という物語だと言えばたしかに骨子はそのとおりなのだが、去勢されていないがゆえに自分の意志では抗えない「発情期」があるダオと、去勢されているがゆえに発情状態のダオの誘惑をかわせるクロスケの関係がじつにエロティック。
2人は一線を越えない。なぜならば2人は階級によって分断されているし、生物的にも性交することはない。
ダオの身体がオスを求めても、クロスケの身体はそれに応じられない。その切なさは、本作の世界が猫の社会として設定されている以上、物語の根幹に関わるものになるだろう。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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