『パンの漫画』
堀道広 ガイドワークス \1,380+税
4月12日はパンの記念日。
天保13(1842)年、旧暦の4月12日は日本で初めてパンが本格的に製造された日である。江川太郎左衛門という代官が、軍用の携帯食糧として作らせた「兵糧パン」は乾パンのようなものだったとか。
戦の最中に煮炊きなどしようものなら煙で相手に居場所がわかってしまう。そうしたことから、保存性がよいパンを採用することになったそうだ。
パンの記念日はこれを由来として、パン食普及協議会が1983年3月に制定した。
言うまでもなく、今や日本ではありとあらゆるパンが食べられる。欧米の伝統的な「食事パン」から、日本独自の菓子パンに総菜パン。
タイトルも直球な本作は、表紙に「パン偏愛者のための101篇」と謳われた、パン好き漫画家によるパン好きのための4コママンガ集なのである!
オシャレな有名店のパン、「パン・ペルデュ・ダンザス」に「セイグル・ノア・レザン・ドゥミ」と注文するのもひと苦労な本格派のパン。
かと思えば、銀の包装パックに包まれたホイップクリーム入りのチョコがけパン“銀チョコロール”、“カステラサンド”といったチープな菓子パンやコンビニの卵サンドも登場。
実話ネタに、ランダムにフィクションが混ざる構成も、堀道広のシュールな作風が活かされている。
なかでも、日々張りこみにいそしむパン好き刑事を主人公にしたシリーズが最高だ。部下があんパンと牛乳を買ってくれば、「あまりにベタじゃないか」とのダメ出しが!? シナモンロールにクロワッサン、はたまたクロックムッシュと手を替え品を替え、部下も苦心するのである。
ともかく読んでいるうちにこれほどパンが食べたくなるマンガはほかにないのでは!?
百花繚乱のパンが楽しめる、究極のパンマンガである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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