『ボクを包む月の光 -ぼく地球(タマ) 次世代編-』第15巻
日渡早紀 白泉社 \429+税
(2015年3月20日発売)
『ぼくの地球を守って』から始まった長い長いドラマも、ここで一区切り。
現世と前世、生と死、魂と心が融合する。『ボク月』15巻、堂々の完結。
今巻で解決する「いれぎゅらーばうんど」は、主人公・小林蓮の父である輪が、すでに死んでしまって存在していない5年後の未来からのメッセージがきっかけだった。
それは、父親のいる未来を発現させたかった蓮の妹・地球子(ちまこ)の働きかけであり、その影響で、いつも輪とともにいた紫苑が5年後に飛ばされてしまったのだ。
輪は紫苑を追いかけ、時空の壁をジャンプし、「生死の境」へ迷いこんだ。
また輪に引き続いて、紫苑と地球子もまた「生死の境」へ。地球子を助けるために、蓮もまたそこへ行き……。
そして最終巻の15巻は、「生死の境」で、紫苑が保護監察士のラズロと等身大のネコ型宇宙獣・キャーに会いにいくところから始まる。
幼い紫苑を救ってくれた、愛や、たくさんの感情の表し方を教えてくれた、ひとりと一匹に。
「生死の境」には、蓮の両親である輪とありす、また彼らそれぞれの前世である紫苑と木蓮(このあたりは『ぼくの地球を守って』をご参照のこと)にとっての、かけがえのない人々がいる。
紫苑にとってはラズロとキャーであり、木蓮にとっては最長老と世話係のモードだ。
輪とありすの、紫苑と木蓮の、それぞれの葛藤や苦しみ……カルマ的なものを昇華するための旅。
そのために「生死の境」は存在している。
「ぼく地球 次世代編」と銘打たれたこの作品で、前作から本当に長いこと続いた木蓮の、そして紫苑と輪の屈託がようやく消えていくのだ。
またそれは、次世代の担い手である、輪とありすの子供・蓮と地球子の力がなければ不可能なことだった。
小林蓮は、木蓮のDNAの影響が濃い少年だ。彼が歌うキサナド(聖歌)の力、そして彼の前世も、この15巻で明らかになる。
いやあお疲れさまでした! と言いたい15巻だが、読み終わって、ああ、なんだここからまた新たに始まるんだ! とわかる一冊。
実際『ぼく地球3rd STAGE』として、掲載誌の「別冊花とゆめ」では、『ぼくは地球と歌う』が新連載を開始している。
タイトルを変更した理由については、柱の著者フリートークに詳しいので、ぜひそこも読んでみてください。
15巻にはそのプレリュード的な歌があったが、どう「地球と歌う」のか、非常に興味深いですね。
(そしてなぜ、「ボク」から「ぼく」に戻ってるのか? ここも気になります)
それにしても、これだけの複雑な設定とドラマをまとめ上げている著者には頭が下がる。
巻を重ねるにつけスピリチュアルな要素が強まっているが、どこまでそれが広がり、人々の心に愛を広め続けるのか、とても楽しみです。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」