『カツカレーの日』第1巻
西炯子 小学館 \429+税
(2015年7月10日発売)
『姉の結婚』、『娚の一生』で30代女性の恋と結婚を描いてきた西炯子、最新作のヒロインはこれまた一癖ありの28歳・ゼネコン系会社員・美由紀。
美由紀が同棲中の恋人を追い出し、きっぱりと別れを告げたのはあらかじめ予定された行動だった。その理由は、彼がフリーターの売れない劇団員だから。
大恋愛の末にあっさり5年で離婚した母を見て育った美由紀の結婚観は、安定した職業の人とふつうの家庭を築くこと。一時の感情に流されることなく堅実な相手を見つけるべく、せっせとお見合いに励みはじめるのだ。
しかし、結婚を決めるまでの相手にはなかなか出会えないもの。
美由紀はお見合い帰りに、読書カフェのノートにままならない現状への愚痴や、揺れる気持ちを書きつづるようになる。それを毎回読んでいる“読者”がいるとも知らずに……。
そして、ある日ついに、その読者である男性が辛口のコメントを残したことから、2人のやり取りがスタートする!
幸せな結婚とは、愛とはなんなのか。人が違えば価値観は違う。
それでも人の幸福や結婚観に口を出したくなるのは、それが人生にとって大事なことだから……。
生き方の違う2人がこの先どんなふうに影響しあっていくのかが見どころだ。
ちょっとやそっとじゃ恋に溺れそうもないヒロインが、食えない相手と丁々発止をくり広げる展開は、著者一流のお家芸。
本作も、恋愛の至言がいっぱいの名作になる予感大である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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