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『恋人の注文承ります!』第1巻 浅野夏(案) 伊藤翔太(画) 【日刊マンガガイド】

2015/08/30


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『恋人の注文承ります!』第1巻
浅野夏(案) 伊藤翔太(画)講談社 ¥602+税
(2015年7月28日発売)


主人公の賢治は、馬が大好きな青年。
ある日、賢治のスマホにいつの間にかインストールされていたゲームアプリ「恋人の注文承ります」。ヒロインキャラクターの「しいな」との恋愛シミュレーションらしいが、勝手に起動したあげく、辞めたら解約金をとられる、個人情報を盗み取る、やたらうるさい、ことあるごとに課金しろと……詐欺じゃん!

賢治がこのアプリに振り回され苦しんでいたところ、スマホから「しいな」本人が飛び出してきた。「恋人です!」と。
そこに、幼なじみの褐色元気少女・志保がやってきて、さあたいへん。
何も知らない子どものようなしいなと、賢治と志保のドタバタラブコメディが始まる。

ところが。賢治はずっと馬しか見ていない。彼にとって馬は家族であり、馬を育てることは生きがい。馬の育成はとてもハードだ。世話だけで一日はあっという間に過すぎていく。言うことを聞かない馬も当然いる。
生きものだから不測の事態だっておこる。しかし、愛情を注げば馬も応えてくれる。信じてくれる。

賢治のしいなの扱いは雑だ。というか雑に扱わなければ、四六時中ひっつきまわり、常識をまったく知らず、感情を制御できないしいなは、手に負えない。そんなしいなを次第に賢治は仔馬(とね)のように感じ、どう育てるべきかを考え始める。

馬の育成と、しいなの成長。この2つを通じて、賢治自身の成長が一番ていねいに描かれている。

競争馬は独り立ちしないといけない。そのためにはひとりに懐きすぎないよう、少しでも多くの人や物と接することが大事だ。賢治も同じだ。多くの人々、手塩をかけて育ててきたたくさんの馬といた時間。ひとつ残らず、賢治にとっての大切な肥やしだ。志保やしいなとすごすめちゃくちゃなラブコメな時間だって、彼の大事な栄養になって、1巻のなかだけでも彼は大きく成長をとげる。

彼の恋人は、当分馬だろう。
でも、こういう青年だからこそ、惹かれるってもんでしょ?



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

  • 『恋人の注文承ります!』第1巻 Amazonで購入

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