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『腐女子の幸せ』 あかまる 【日刊マンガガイド】

2015/09/26


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは『腐女子の幸せ』

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『腐女子の幸せ』
あかまる KADOKAWA ¥780+税
(2015年9月4日発売)


黒歴史マンガというのは、読者の歯がゆさの、供養だ。
アイタタなネタは、正直見ていて辛い。それでも読んでしまうことで、むずがゆさを共感して、お焚き上げできる快感がえられる。

このマンガは、いちおうテーマは「腐女子(BL好き女性)」とはなっているものの、ニートの黒歴史全般を描いている。
著者の話によると、実体験をもとに描いているそうな。

主人公・かな子(25歳無職、もちろん彼氏もなし)は、家に引きこもっており、人間同士の接触がほとんどない。
マンガのなかでは数多くの男性を見てニヤニヤしているものの、宅配業者の実在の男性を見た途端妄想が走りだして、結婚まで想像してしまう始末。

携帯ゲームは、みんなが仲間になって協力してくれるからと、幸せを感じてドハマリ。
ところが働いていないからお金がない。
彼女が苦しまぎれに手を出したのは、祖母が親に内緒でくれたお年玉。

かな子が求めているのは、承認される場所だ。
絵を描いてアップしたり、ブログを立ち上げたり、同人誌即売会に出たりと、じつは彼女、かなりアクティブ。
方向が間違っているだけで、磨き上げれば何かを生み出し続けられるだけの熱意はある。叩かれてもめげない精神も相当にタフ。

人間の承認欲求は、人と話す時、自分自身が成長を感じた時、自然と昇華される。
なんらかの形で充足され、独り立ちできるようになった時。黒歴史の話をネタにもがき苦しむことを、楽しめるようになる。

にしても、友人のアリスさん(16)。
自分よりはるか年下。自分よりはるかに絵がうまくて気づかいができてまじめで優しい。
黒歴史より、こういう友人に対しての、自分の醜い嫉妬に気づいた時の方が、案外辛かったりするものです。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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