日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『怪奇まんが道』
『怪奇まんが道』
宮崎克(作) あだちつよし(画) 集英社 ¥720+税
(2015年11月19日発売)
怪談系季刊雑誌「コミック特盛 新耳袋アトモス」で連載され、マニアの間で秘かに話題を呼んでいた『怪奇まんが道』がついに単行本になった。
『エコエコアザラク』の古賀新一、『蔵六の奇病』の日野日出志、『富江』の伊藤潤二、『不思議のたたりちゃん』の犬木加奈子。
いずれも60~90年代に一世を風靡した怪奇&ホラーマンガ界のスターであり、当時の子どもたちに一生引きずるようなトラウマを植えつけた張本人。ことさらホラーファンでなくとも、アラサー~アラフォー世代なら、懐かしい~!と声が上がること間違いなし。
本作は、そのタイトルから察せるように、4人の怪奇漫画家の創作秘話をまったくの無名時代から描いたもの。
あんなマンガ描く人だし、さぞ変人でトラッシュな人生を歩んでたんだろうな~と思いきや、どっこい。いずれも人並み以上にまじめで誠実な人物で、大きな憧れと情熱を持って漫画家になることを志し、苦悩しながらも己のまんが道を切り開いてゆく様には、思わず胸熱くせずにいられない!
なかでも、あの日野日出志がじつはギャグ漫画家を志していたものの赤塚不二夫という天才を知って断念。自身のルーツとホッコリかわいらしい画風に悩みながらも(って、想像つかない!)レイ・ブラッドベリに啓示を受け、唯一無比の世界観を生み出したというエピソードには、びっくり。
狂人には狂気は描けないということだろうが……。稀代のカルト作家の人間くさい素顔を浮き彫りにする取材能力、さすが『ブラック・ジャック創作秘話』原作者!である。
ホラーという外道に咲いたあだ花ゆえの、毒々しくももの悲しい味わいにジ~ン。
特に、80~90年代に少女雑誌を中心に開花したホラーブームの作家群に関しては、その強烈な個性に反してまとまった文献もなく、中古市場でもマトモな値がついていないため、今こそ再評価が望まれる。
とりあえず本シリーズ、続編も予定されているそうで、次はあの人!? と今からワクワクです。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69