日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『まんが家総進撃』
『まんが家総進撃』第3巻
唐沢なをき KADOKAWA ¥640+税
(2015年10月24日発売)
マイナーな漫画家やその友人家族、アシスタント、漫画家志望者、編集者……を主役にマンガ界の実情を描いた連作短編シリーズ第3弾が出た。
『まんが極道』、『漫画家超残酷物語』を含めると、いまや10巻以上となる著者のライフワーク的まんが家シリーズ。
『まんが道』から『バクマン。』、『重版出来!』まで、漫画家マンガの多くが、そのハードな実情を描きつつも、最終的にはマンガ愛あふれるマンガ賛歌となっているのに対して、こちらはひたすらネガティヴに徹しているのが特徴であり、魅力でもある。
在宅業だからと兄弟から親の介護を押しつけられた漫画家が、糞尿にまみれながら原稿を落とすまいと奮戦する「介護」、出会いのない独身漫画家が新しく担当になった若い女性に勘違い暴走してゆく「新担当」、実力も描きたいテーマもない漫画家が周囲の力で大ヒット作家に仕立て上げられる様をアイロニーたっぷりに描いた「作者よ!」等々、たぶん「業界あるある」なんだろうな……と思わせる、しょっぱいエピソードのオンパレード。
お決まりの締め切り前の修羅場など、他人から見れば、地獄絵図でしかないようなシーンでも、当の本人は意外と幸せそうだったりして。「作家」とはつくづくジャンキーな性なのだなあ……とあきれたり、感心したり。
「まんが家なんかロクなもんじゃない」という叫びの向うに、著者のマンガへの愛憎がひしひしと伝わってくる。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
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