365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月20日は霧笛記念日。本日読むべきマンガは……。
『小学館文庫 ウは宇宙船のウ』(「霧笛」収録)
萩尾望都 小学館 ¥495+税
明治12年(1879年)の12月20日、青森県の尻屋埼灯台に初めて蒸気式霧笛が採用された。
それを記念し、今日は「霧笛記念日」と定められた。
霧笛とは、多くは灯台に併設される霧信号所のこと。
霧や吹雪などで視界が悪い時、船舶に対し音で信号所の概位・方向を知らせるものだ。
尻屋崎は、難破岬と呼ばれるほど遭難船が多く、危険な場所だった。そこで明治に入り、日本が海外と貿易を行うようになって、船の安全を守るため灯台と霧笛が設置されることになった。
しかし現在は、GPSやレーダーなどの普及により、海上保安庁所管の霧信号所はすべて廃止されているとの話。
残念だが、今は録音でしか聞けないようだ。
しかし今日ご紹介するマンガ「霧笛」で、その雰囲気だけは充分に伝わるはずだ。
アシモフ、クラーク、ハインライン。
海外SFの古典ともいえる名作の作家たちで、海外ではSF御三家と呼ばれている。
そしてもうひとり、この3名に勝るとも劣らぬ人気作家がいる。
レイ・ブラッドベリだ。
特にアラフォー、アラフィフでSFやファンタジーの洗礼を受けた方なら、その名前にはとても親しみがあるはず。
作品も『華氏451度』、『火星年代記』など、一度は読むべきと言われる名作ぞろい。短編にも定評があり、恐怖を誘うもの、リリカルなもの、それぞれに違う様々な味わいが魅力となっている。
そんなブラッドベリの短編8編を、萩尾望都が見事に描き出したベストセラー『ウは宇宙船のウ』。
なかでも「霧笛」は、なんとも味わい深い傑作で、一読で心に残り、離れなくなることうけあいだ。
古くからの灯台守のマックダンと、若いジョニー。
ジョニーが休暇で街に戻ることになるその前夜、マックダンはジョニーに話したいことがあるという。
灯台の霧笛を聞きながら、マックダンは不思議な話を始める。
霧はどんどん濃くなり、霧笛は響き続ける。やがて、彼らの前に現れたものとは……?
萩尾望都がマンガ化した名作小説は数々ある。
ブラッドベリだけでなく、コクトー『恐るべき子供たち』や光瀬龍『百億の昼と千億の夜』など、原作よりもマンガを先に読んだ人は結構な数にのぼるのではないか。
常に原作の魅力を余すところなくマンガで表現し、その都度、マンガの持つ可能性を広げてくれることに感謝を捧げたい。
まずは今日、「霧笛」の持つ不思議で懐かしい雰囲気、静かな哀しみと深い叙情性を、みなさんにもぜひ味わっていただければと思う。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」