日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『なり×ゆきリビング』
『なり×ゆきリビング』第1巻
乃花タツ 芳文社 ¥619+税
(2015年12月7日発売)
この表紙がじつにいい。
2人の仲のいい女性。お互い「半分はくつろいでいる」「半分は気を使っている」。
佐藤雪(さとう・ゆき)。ショートカットにメガネ。いわゆる「できる大人」。多趣味で、喫茶店や百貨店めぐりが好き。雑貨やインテリアにもこだわりがあり、特に食器大好き。運動は得意ではない。
篠峰奏莉(しのみね・かなり)。黒髪ロングヘア。極めてマイペースで、明るく元気いっぱい。無趣味なのが悩みどころ。トンチンカンな会話が多く、突っ走ってやらかして後悔ばかり。運動は得意。
なにもかもが真逆。そもそも最初、会社の同じ部署で仲がいいわけではなかった。
酔った勢いで、佐藤の家に篠峰が住む約束をしてしまう。
2人とも、我に返って焦ったものの、そのままの勢いで2人暮らし開始。
佐藤は王子様型の女性。てきぱきなんでもこなす。相手に極めて優しい。
篠峰は小動物型の女性。のびのびした性格でだれとでも仲よくなれる。
2人も最初は、他人行儀だった。しかし日々をともにするうちに、お互いの距離感をうまくはかれるようになる。
いっしょにごはんを食べにいったり遊びにいったりもする。
佐藤は篠峰のおおらかさに心を開くし、篠峰は佐藤のまじめさに助けられる。
ただし、依存はしない。
宅飲みしていた、2人の会話。
「でもま 結婚したらこんな(お金の)使い方できないよねぇ……」
「結婚しないならなおのことできなくなっちゃうね ためなきゃ」
「私達……人生で今が 一番自由な時なのかもね」
とても幸せそうな2人。将来どうなるかは、やっぱり社会人だし不安はある。
不安を、押しつけず、引き受けず、なんとなく共有する。
この「なんとなく」な距離感を保てるときに、2人の空間は心地よさを産む。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」