日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『世界ボンクラ2人旅! タイ・ベトナム前半戦』
『世界ボンクラ2人旅! タイ・ベトナム前半戦』
水谷さるころ イースト・プレス ¥1,199+税
(2016年1月7日発売)
2008年にCSの旅チャンネルでオンエアされ、大好評だった『行くぞ!30日間世界一周』。
当時、絶好調にくすぶっていたイラストレーターの水谷さるころが、知り合いの知り合いである野田真外ディレクターからいきなり召喚され、30日間で10カ国・14都市をめぐるハードな企画にかりだされる。
この2人にプロデューサーの山本朋寛を加えた“ボンクラ3人組”による珍道中は大きな反響を呼び、翌2009年には第2弾となる『行くぞ!30日間世界一周 2周目!』も制作。さらにはDVD化&さるころ自身によるコミカライズと多面展開された。
さて、コミックス版のシリーズ完結編となる『35日間世界一周!! Part5 カリブ海リゾート& NY・ハワイ編』のラストでも明かされているが、オンエア当時は既婚者だったさるころ&野田Dは、帰国後にそろって離婚。
やがて、さるころが趣味にしていた空手に野田Dが参加したことで2人の心境に変化が訪れ、なんとびっくり事実婚のパートナーに。世界一周時の2人の関係を知る番組ファンにとっては仰天の出来事だった。
そんな2人もいまや子宝に恵まれ、さるころの育児マンガ『マイル日記(仮名)』も評判だが、話は出産前にさかのぼる。
番組で訪れたタイに魅了された2人は、一泊しかできなかったことを悔やんでおり、リベンジを敢行。ついでにベトナムへも足をのばすことにした。
本作は、そんなパートナーになりたてホヤホヤの2人が、初めて海外へ出かけた仲睦まじい(?)旅の記録である。
強行軍の番組企画とは異なり、今回は1週間かけて2カ国をゆっくりと観て回るスケジュール。
世界を2周した2人とってはチョロい旅だと油断したのか、バンコクに着くなり、さっそくタクシーにぼったくられ……。早くも珍道中の予感である。
さらに都市河川マニアの野田Dがチャオプラヤー川の連絡船で鼻息を荒くしているうちに第2の事件が発生。
それでもへこたれず、うまいものを食べて、ビールを飲んで、買いものをして、観光をしてとじつに楽しそうだ。
今回はタイとベトナムを往復するスケジュールの前半戦が収録されている。
両国は1時間半程度のフライトで行き来できるが、近隣国とはいえ違った表情を見せてくれるのも興味深い。
全編カラーで写真も豊富。旅好きの方には参考になるネタが盛りだくさんだ。
後半戦はベトナムからタイに戻った2人が寺めぐりを敢行するようだが、今度はどんな小事件が起こるのか、楽しみに待ちたい。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(2月13日公開)のパンフレットに参加しております。