日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『双子の帝國』
『双子の帝國』第1巻
鬼頭莫宏 新潮社 ¥580+税
(2016年3月9日発売)
大陸へと侵攻した「光国」が、大陸政府やゲリラと戦い続ける一方で、貧困にあえぐ光国庶民は娘を娼婦として国に差し出すことを余儀なくされている。
光軍占領下の大陸で、触れた者に死をもたらす少女・フアを奴隷にしてしまった少年・ガウ。彼女にかけられた呪いを解くための魔法使いを探す旅のさなか、彼は、光国とトラブルを起こし光国海軍に追われることとなる。
彼は、光軍により殲滅された謎の少数民族・空霞の生き残りだったのである……。
サイクリングマンガ『のりりん』を読み心地さわやかに完結させた著者・鬼頭莫宏の新作となるのが本作。
日中戦争を下敷きにしたとおぼしき戦争ファンタジーだ。『ぼくらの』や『なるたる』の鬼頭莫宏らしい、「攻めた」世界観になっている。
物語はまだまだ序盤だが、DV少年の暴力にさらされる内気な少女という点では『ぼくらの』の宇白兄妹、あるいは空飛ぶ戦艦というガジェットでは『終わりと始まりのマイルス』を、またやたら殺傷力過剰なテレポート能力は『なにかもちがってますか』など著者の過去作品のモチーフが見え隠れする。
物語はまだまだ序盤で、タイトルに隠された意味さえ定かではないが、構想10年という言葉にふさわしい、著者の集大成的作品になる予感。
鬼頭莫宏だけに、これからどんな(ひどい?)展開になるのやら……おっかなびっくり見守っていきたい。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas