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『終電ちゃん』第1巻 藤本正二 【日刊マンガガイド】

2016/04/25


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『終電ちゃん』


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『終電ちゃん』第1巻
藤本正二 講談社 ¥570+税
(2016年3月23日発売)


『終電ちゃん』は、終電に必ず乗っている「終電ちゃん」にまつわるハートウォーミングだけどちょっと変わったお話。

終電ちゃんは、いわゆる電車の擬人化でもなく、ましてや運転士や車掌、駅員でもない不思議な存在。擬人化であるとすれば終電そのものといったところだろうか。

特に終電ちゃんが何者であるかは言及されていないが、とにかく各電車の終電の屋根の上に乗っており、乗客が終電に乗り遅れないように見守っている存在だ。あえて言い表すなら妖精的な存在だろうか。

作中には何人もの終電ちゃんが存在するが、メインとなるのは中央線の終電ちゃん。
背中に勾配標を背負っている。山手線の終電ちゃんは普通転轍機を引きずりまわし、小田急小田原線の終電ちゃんは信号機を持っている。

終電ちゃんはいつも乗客のことを考えて、人々ができるだけ終電を逃してしまわないように気を配っている。
吉祥寺駅での井の頭線との接続待ちや新宿駅での山手線の接続待ちで、すでに中央線に乗っている乗客に迷惑をかけていることをわかりながらも、接続待ちで乗れない乗客を出さないように待ち続けたりする。

みんなに愛される存在であると同時に、状況によっては疎まれる存在でもあることをわかっているからこそ、乗客とは深い関わりを持たないようにも心がけている。

ただ、そんな状況でも、一度でも終電に乗った乗客の名前はすべて覚えており(なぜか苗字ではなく下の名前で)、いつどんな状況で終電を利用したかも把握している。
気安くもあり、ぶっきらぼうな口調もそんな終電ちゃんをよく表している。

ちなみに筆者がよく利用している路線は京浜東北線。一応、中央線とは東京駅で乗り継ぎできるので、いつかは京浜東北線の終電ちゃんに登場してほしいものだ。



<文・岡安学>デジタルモノなどのガジェット系を中心に雑誌やWebで活動するフリーライター。元ゲーム誌編集者で、ゲームやアニメ、マンガなどのメディアも守備範囲。ソフトとハードのどちらもこなす。現在、生活総合情報サイト「All About」にてデジカメのガイドも務める。

単行本情報

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