『PACT』第2巻
久慈進之介 講談社 \565+税
(2014年7月4日発売)
第1話冒頭でいきなり「窒素爆弾」によってアメリカ大陸が沈没(!)という超大事件が勃発。
劇中で「奴ら」と呼ばれる、南極大陸に本拠地を構える謎のテロリスト集団は、その爆弾を世界中の海底に仕掛けているらしい。だが日本のNWD(近代兵器処理隊)には爆弾処理の天才と呼ばれる少女・町田真知子(マチ)がいた──。
……と、ここまで読んで「はーん、なるほど」と、なんとなく先を想像する方もいるかもしれない。ところが本作、いきなり彼女が爆弾の解除に失敗して惨死するという予想外の展開が待ち受ける。
そして、彼女の「保護者」でありながら、彼女を守れなかった自責の念に取り憑かれたように爆弾解除の使命に燃えるのが、本作の真の主人公・荒凪凪人(ナギ)である。
なにせ「合成ヒロポン」なる薬物を打ってまでマチが遺した爆弾解除プログラムを短期間で習得せよというムチャ振りにもいっさいの疑問を抱かずに身を投じる主人公。今のところ目的のためなら周囲との軋轢もおかまいなしという破滅的な人物像なのだが、これがどう変貌していくかは見どころである。
ほかにも極端にカリカチュアライズされた狂気のロシア大統領を筆頭として、ほぼどうかしている人物しか登場しない本作だが、第2巻では唯一の良心と思われていたマチとの出会いを回想で丁寧に描写したかと思いきや、そのマチがどうやら生き延びて(えっ!?)テロリストに加担(マジで?)している……と、これまた思ってもみなかった方向へと話が転がり始めている。
そもそも、テロリストの正体がなんなのか? 事件にも主人公の人間関係にも光明は見えてくるのか? などなど、どこに着地するのか気になることだらけである。
率直に言って、現行兵器の描写などには疑問を感じる点はあるのだが、そのツッコミも含めて、あらゆる予想外を楽しみたい。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。