このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

『おやすみカラスまた来てね。』 第1巻 いくえみ綾 【日刊マンガガイド】

2016/07/06


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『おやすみカラスまた来てね。』


oyasumikarasumatakitene_s01

『おやすみカラスまた来てね。』 第1巻
いくえみ綾 小学館 ¥602+税
(2016年6月10日発売)


少女マンガ誌、ヤングレディース誌をまたにかけ、多種多彩かつ高レベルの作品を次々に送り込む円熟の安打製造機・いくえみ綾が、青年誌に本格進出を果たした(「月刊!スピリッツ」連載中)。

主人公は無職の24歳・十川善十(そがわ・ぜんじゅう)。
高校卒業後、札幌のメンズパブでバーテンダーとして働き、そこそこ楽しくやっていたが、同僚がトイレで倒れているのを見て戦慄。浴びるように酒を飲み続ける日々に終止符を打ち、のほほんと暮らしていた。しかし、そんな生活も長くは続かず、年上の彼女から三行半を突きつけられてしまう。

失意のなか、すすきのに繰り出し、ヤケ酒をあおってフラフラしていると、白い鳥に誘われるようにオーセンティックなバーへIN。おいしいシングルモルトと店内の落ち着いた雰囲気を見て、思わず「ここで働きたいんですけど」と白髪のマスターに直訴。
翌日、履歴書を持参して店へ戻ると、そこにはマスターの娘が。
彼女との奇妙なやりとりの後、なんと善十が新マスターとしてカウンターに立つことに――!?

この第1巻はまだ序章のようで、物語の全容は見えない。
運命的な出会いをへて無職から渋いバーのマスターへ昇格した青年が、右往左往しながら“本物のバーテンダー”として成長していく物語が展開される一方、年上の元カノ、先代マスターの娘、ライバル店の女性バーテンダー、花屋の娘というタイプの違う4人の美女に翻弄されていく恋模様が描かれる。

うーむ、「最終的にだれとくっつのか?」という興味だけで読み進めていくと、いくえみ流の術中におちてしまいそうですな。
まだまだ女性陣のバックボーンや抱えている闇が小出しの段階なので、どこに転がっていくのか先読み不能だ。

さりげなくバーの作法が挿入される心憎い演出にも注目。
大人の恋と大人のお酒が味わえる、ぜいたくな逸品だ。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。今秋公開予定の内村光良監督『金メダル男』の劇場用プログラムに参加しております。

単行本情報

  • 『おやすみカラスまた来てね。… Amazonで購入
  • 『太陽が見ている(かもしれな… Amazonで購入
  • 『あなたのことはそれほど』 … Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング