日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『太陽が見ている(かもしれないから)』
『太陽が見ている(かもしれないから)』第4巻
いくえみ綾 集英社 ¥419+税
(2016年3月30日発売)
楡(にれ)と岬(みさき)と日帆(かずほ)という3人の高校生男女の関係を描いた本作も、いよいよ第4巻に突入。
フラットハウスでの夢のような共同生活を終えて、実家へ戻った岬と日帆。
楡への思いを通じて、強い友情を育みつつあった岬と日帆だが、クリスマスの夜の些細なすれ違いをきっかけに、岬は日帆への不信感を募らせる。
そして、大晦日の夜に起こった「ある事件」を境に、3人の関係は大きく変化してゆく――。
岬を大切に思いながらも、自分なりの決着として日帆と生きてゆくことを選択する楡。
不幸な過去を取り戻さんとばかりに楡へ執着する日帆。
楡の心中を理解し、彼への思いを断ち切るように新たな恋へ踏み出す岬。
だれの気持ちもわかるだけに、もどかしくって、やるせなくって、たかが高校生男女の三角関係…と思っていたら、強烈なパンチを喰らうこと間違いなし。
それぞれの抱えるバックボーンやちょっとした心の機微をデリケートに生々しく描き出し、だれもが感情移入せずにいられないリアリティと説得力を生み出す手練は、さすがいくえみ綾!
甘美な痛みを抱えたまま、彼らの三角関係はとりあえずは決着がつき、高校生活もおだやかに幕を下ろすのだが……。
第5巻からは、ついに第2部がスタート。少し大人になった3人の関係がどう展開してゆくのか?
ドラマ『いつ恋』も真っ青の、せつなすぎる恋と友情の物語の行方に期待!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69