日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『構成/松永きなこ』
『構成/松永きなこ』 第1巻
ピエール杉浦(作) 清水しの(画) スクウェア・エニックス ¥571+税
(2016年7月12日発売)
承認欲求というとマイナスイメージを持つ人もいると思うが、自分をだれかに認めてもらいたいというのは、食欲・睡眠欲・性欲につづく人間の第4の本能らしい。
そんな純粋な衝動から発せられた叫びは、人の心をざわつかせる。
ラジオ番組へのハガキ投稿を生きがいとする人、俗にいうハガキ職人の松永きなこ(25)は、ある出来事をきっかけにラジオやテレビの企画を考える職業・放送作家を目指すことになる。
きなこが悪戦苦闘する様子には、ふだん見ることのできないテレビ・ラジオの制作の裏側をのぞき見する楽しさもあるのだが、それ以上に部屋に閉じこもってラジオばかり聴いていた彼女が、積極的に人の輪に加わっていこうとする戦いの熱がある。
ダメ出しをされようとも企画書を携えて先輩作家のところに向かうきなこの姿は、SNSでお手軽に承認欲求を満たしている人たちとはちょっと違うかもしれない。
彼女のように本気で挑み、本気で応えてもらう。私たちは、そんなやりとりこそを望んでいるのではないだろうか。
オビには「働く人すべてに捧げる」というコピーがおどっているが、人と接することに臆病になっているすべての人に手に取ってほしい熱い物語だ。
<文・籠生堅太>
フリーの編集者、ライター。読むと元気になれるマンガが好きです。
Twitter:@kagoiki