日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『G戦場ヘヴンズドア 完全版』
『G戦場ヘヴンズドア 完全版』 第1巻
日本橋ヨヲコ 小学館 ¥741+税
(2016年8月12日発売)
『ここは戦場だ 気軽に踏み込むな。』
『丸腰で来たら 撃ち殺すぞ。』
編集長は、彼らに伝えた。
売れっ子漫画家の息子で、父への反発心から小説家を目指す堺田町蔵。
いつもマンガばかり描いている寡黙な少年・長谷川鉄男。
鉄男は「堺田君と一緒にマンガを作りたいんだ。」という。町蔵は鉄男のマンガを読んでショックを受け「オレを震えさせてくれるのなら この世界で、一緒に汚れてやる。」という。
しかし2人が向かおうとした「表現」のプロの世界は、高校生が踏みこむにはあまりに過酷だった。
2000年から連載され、第3巻まで刊行されたコミックスの完全版。
『少女ファイト』の日本橋ヨヲコの画業20周年として、カラーページと描きおろしページを追加して復刻された。
作中で描かれるプロの現場は、無慈悲だ。
マンガが好きだから、なんて甘い理由だけだったら、即引き離される。
オリジナリティをいっさい持たず、技術だけを売るプロもいる。
あっという間に摩耗して漫画家の寿命を迎えるものもいる。
戦友となった少年たちの心が、伸びながら傷つき続ける成長物語。
同時に、現場で命をすり減らしてマンガをつくり続ける父親たちの心情も描かれている。
第1巻は町蔵がマンガを描くおもしろさに気づき、楽しい学園生活も何もかも捨てて、絶望と焦燥感渦巻く世界に直面するところまで。
日々だらだらと性交をしていた女性に、彼は叫ぶ。
「セックスより面白いことを知ってしまいました。オレはもうそっちには戻れません。」
もう止められない。町蔵と鉄男の血まみれの疾走は、15年たった今でも、熾烈だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」