複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「プロレスラー・棚橋弘至が『仮面ライダー』映画に出演」について。
『「仮面ライダー」超解析 平成ライダー新世紀!』
別冊宝島編集部(編) 宝島社 ¥1,700+税
(2016年10月13日発売)
あのイケメンレスラーが、なんと仮面ライダーの世界に乱入ッ!?
12月10日から全国の東映系劇場での公開が予定されている映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』に、新日本プロレス(新日)所属の棚橋弘至選手が出演することが発表された。
『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』は、現在放映中の『仮面ライダー エグゼイド』の世界がベースとなる。
正体不明のゲームウイルス生命体“パックマン”が襲来し、人類に未曾有の危機が訪れる物語なのである。
“パックマン”とは、もちろん誰もが知っているゲーム『パックマン』のキャラクター。アーケードの筐体にコインを積み上げて、何十ゲームも何十ゲームも、繰り返しプレイしたゲームファンも多いのではないだろうか?
2015年に公開されたアメリカ映画『ピクセル』に続き、日本映画でも大々的に『パックマン』がフィーチャーされるわけだ。
本作は仮面ライダー生誕45周年記念作品である。棚橋選手は『アメト――ク!』(テレビ朝日系列)の「仮面ライダー芸人」の回にゲストで呼ばれたり、リングインのときには「お前の罪を数えろ!」と『仮面ライダーW』のセリフを使ったりするほどの仮面ライダー好き。まさに念願かなってのライダー出演となったわけである。
新日本プロレスといえば、ゼロ年代には売上高が全盛期の半分以下にまで落ちこんだものの、現在はV字回復をなしとげ、いまや「プロレス人気復活」を牽引するフラッグシップとなっている。
そんな新日の中核を担っているのが棚橋選手だ。
デビュー当初は甘いマスクのヤサ男といったイメージがあったが、IWGPヘビー級王座の通算最多防衛記録、連続防衛記録、最多戴冠記録を保持。さらにプロレス大賞でもMVPを何度も獲得しており、まさに「新日の顔」と呼ぶにふさわしい大エースに成長した。
つまり棚橋選手は、再燃したプロレスブームにあって、最重要なキーパーソンといえる。
とはいえ、「昔はよくプロレスを見たけど、最近は……」といったかつてのファンや、「プロレスって野蛮でしょ?」なんて食わず嫌いの方からすれば、棚橋選手がどんなレスラーなのか、わからないのではないだろうか。
そう、困ったときこそマンガである。
今回は「棚橋選手を知るためのマンガ」を大特集する。
マンガを読んで“100年にひとりの逸材”を理解し、プロレスブームの波に乗ろう!
最初からクライマックスだぜっ!!
『ろくでなしBLUES』 第1巻
森田まさのり 集英社 ¥400+税
(1989年1月発売)
レスラーの魅力は、そのファイトスタイルにある。
棚橋選手のフェイバリット(得意技)といえば、ハイフライフローだ。
コーナーポストの上から相手めがけてジャンプし、自分の全体重を浴びせる空中殺法である。
ダイビング・ボディプレスと似ているが、ジャンプしたあと屈伸運動をし、空中で勢いをくわえるのがポイント。ガメラ式ダイビング・ボディプレス(山本小鉄)の名前でおぼえているオールドファンもいるのではないだろうか?
はじめてプロレス会場を訪れた人も、そのダイナミックさにきっと目を奪われるハズ。
そしてマンガの世界でボディプレスを得意とする人物は、『ろくでなしBLUES』(森田まさのり)の前田文尊(まえだ もんそん)だ。
文尊は主人公・前田太尊(まえだ・たいそん)の父親であり、尚輪寺の住職。仏に仕える身でありながらバイオレンスで、隙あらば長兄・富士雄(ふじお)にボディプレスを浴びせている。まさに「世界最強のおやじ」だ。
そういえば『男たちの好日』では、主人公の母親がやはりボディプレスを得意技にしていた。
強いオトナの代名詞、それがボディプレスなのであるッ!!
ちなみに棚橋選手は、ハイフライフロー以外にもスリングブレイド(旋回式フライング・ネックブリーカー)やテキサスクローバーホールドを得意技としている。どちらも『キン肉マン』のテリーマンが得意とする技だ。
ヒールターン(悪役転向)などせずにベビーフェイス(善玉)を貫く姿勢も、まさに正義超人。よくよく見ればルックスも、ザ・マシンガンズ結成当初の長髪の頃のテリーマンに似ていないこともない。
つまり棚橋選手は、テリーマンとスカイマン(空中殺法)の特性を併せ持つスーパースターなのだ!
う~ん、超人オリンピック!
『しんにち!』 第1巻
まつもと剛志(著) 新日本プロレス(協) 白泉社 ¥600+税
(2015年7月29日発売)
現在の新日人気の復活は、リング上のパフォーマンスだけによるものではない。
積極的なメディア露出を展開したことで、一般層へとアピールしてきた点も忘れてはならない。
そんなメディアミックス展開の一例が、白泉社「ヤングアニマル」で連載されていた『しんにち!』(まつもと剛志)だ。
新日本プロレス所属のレスラーをモデルにしたキャラクターたちが高校生になり、「新日本プロレス高専」に通い、学生生活を送る4コママンガとなっている。
新日高専は普通学科と悪役(ヒール)学科にわかれているのがおもしろい。いままでは「プロレスマンガ=劇画」のイメージが強かったが、かわいらしい絵柄で学園モノに仕立てたところが本作の特徴。
連載時と現在とでは、すでに新日の所属選手が異なっているが、各レスラーのキャラを理解するにはうってつけの作品だ。
棚橋選手(をモデルにしたキャラ)は本作の主人公であり、やはり彼こそが「新日の顔」なのである。
棚橋選手の“外部露出”はほかにも数多い。
10月14日にテレビ東京系列で放映が開始したテレビドラマ『石川五右衛門』にオリジナルの剣客・榊基次役で出演。
本作の原作は、『神の雫』や『金田一少年の事件簿』の原作者である「キバヤシ」こと樹林伸が担当しているので、マンガ好きにとっても見逃せない作品となっている。
10月1日から放映が開始されたテレビアニメ『タイガーマスクW』では、新日本プロレスが舞台となるため、棚橋選手(CV:鈴村健一)が実名で登場し、タイガーの必殺技開発に協力する。
『大長編ドラえもんVol.9 のび太の日本誕生』
藤子・F・不二雄 小学館 ¥400+税
(1987年7月1日発売)
また、2016年3月に公開された『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』にも、ゲスト声優として出演したことも忘れてはならない。
本作は、藤子・F・不二雄の劇場版大長編『ドラえもん』シリーズの第9作『のび太の日本誕生』のリメイク作である。元となった1989年版は、劇場版『ドラえもん』シリーズ史上で最多の観客動員(420万人)を記録した大ヒット作だが、今回のリメイク版も動員355万人、興行収入40億円を記録。
2005年にリニューアルされて以降の「第2期」では、最高の興行成績を達成した。
タイムマシンで旧石器時代に家出したのび太たち一行は、そこでヒカリ族のククルと仲良くなる。しかし、ヒカリ族は精霊王ギガゾンビ率いるクラヤミ族に襲われてしまい、のび太たちはヒカリ族の救出に向かうのであった。
棚橋選手は、このクラヤミ族の一員として、本作に出演したのである。
なにしろ『新・のび太の日本誕生』なのだから、略せば「新日誕生」、すなわち新日のエース棚橋選手に声がかかるのは必然だったのだッ!!
実写映画、マンガ、実写ドラマ、アニメ、アニメ映画と、あらゆる分野でマルチに活躍する棚橋選手。リングの上では常にベビーフェイスだが、外部仕事ではヒールが多めなので、“本業”とは違った側面を見ることができるだろう。
『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』では、“パックマン”の仲間・ロボルバグスターとして登場するらしいが、はたしてどのような役回りになるのだろうか?
それにしても『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』、とても長いタイトルである。
あんまり名前が長いから、ロボルバグスターにやられたダメージが引っこんじまったァ。『パックマン』を何十ゲーム(じゅうげえむ)も何十ゲーム(じゅうげえむ)もやってたから……って、まさかの寿限無オチッ!?
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama