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『NOEL』 第1巻 大岩ケンヂ 【日刊マンガガイド】

2016/12/21


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『NOEL』


NOEL_201

『NOEL』 第1巻
大岩ケンヂ KADOKAWA ¥570+税
(2016年11月26日発売)


幼女が撃つ! 幼女が破壊する! 男たちは、なんか適当に死ぬ!
ハイパー幼女スラップスティックアクション。

ノエルは赤いランドセルを背負った小さな女の子。
彼女といっしょにいるピエトロは、いかつい顔をした背の高い男性。
ノエルはこんななりだが、新生エウロパ皇国の特務機関で隊長を務めていた、凄腕軍人。
ピエトロとともに国を裏切り、妹を救うために突き進む。武器は背中に背負った、軍用「ランセル(ランドセルではない)」。武器であり、盾であり、移動手段になる、万能機械だ。

といってもそんなに健気なもんでもなく。
ケンカ友だちだった幼女ラズベリーを陥れて、彼女をお尋ね者にして逃亡の旅に巻きこんだ。
不死能力を持っているピエトロを盾にし、幾度も彼を殺して窮地を脱する。
金の亡者で、お金のためなら仲間だって平気で売る。
ラズベリーがまじめな兵士で、ピエトロもノエルを慕って努力しているだけに、ノエルのクズ幼女っぷりがキラキラ輝いている。

大きな男性と幼い少女、という組みあわせは非常に魅力的だ。
しかも少女側が先頭にたって、男性がその補助となる構図。
女の子のかわいさかっこよさを引き立てる道具としてわりきられた男性は、できれば頑丈で強そうで、でも目立って戦わないほうがいい。

ピエトロは「ぐちゃぐちゃに切り刻まれても死なないという不死設定。
加減を間違えると少女残虐譚になりかねないところが、『トムとジェリー』的なドタバタコメディにおさめることに成功している。
車で走っている時に、防弾の盾としてピエトロを貼りつけているシーンは、あまりにも酷い。
一周して2人の主従関係が愛しい。

物語設定はヘビーだ。
幼女ノエルやラズベリーたちは、もともとはもっと育った女性。皇国の士官学校の人体実験被験者。
常若という技術で、依代である幼い身体にすべてを移された。
彼女たちがそれを望んだのは、「人体不死化」研究を促進させるため。
ノエルは妹のリリを不死化で救うため、必死だ。
ピエトロはラズベリーの弟で、珍しい不死化成功例。
第1巻ラストから一気に、なぜノエルが破天荒な行動ばかり取っているのか、真意が見えてくる。

しかし問題はここからだ。姿形の変わったノエルは、妹を救えるのか、救ってどうするのか。
幼女の傍若無人が楽しいこの躁マンガ、ハイテンションなのは、哀しみの裏返し。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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