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『しゃばけ漫画―仁吉の巻―』 畠中恵(作) 柴田ゆう(キャラクターイメージ原案) 高橋留美子、みもり、えすとえむ、紗久楽さわ、鈴木志保、吉川景都、岩岡ヒサエ(画) 【日刊マンガガイド】

2017/01/06


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『しゃばけ漫画―仁吉の巻―』


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『しゃばけ漫画―仁吉の巻―』
畠中恵(作) 柴田ゆう(キャラクターイメージ原案)
高橋留美子、みもり、えすとえむ、紗久楽さわ、
鈴木志保、吉川景都、岩岡ヒサエ(画) 新潮社 ¥430+税
(2016年12月1日発売)


『しゃばけ漫画―仁吉の巻―』は、畠中恵の原作による人気シリーズのマンガ版。
江戸時代を舞台にしたこの人気シリーズは小説版だけで10タイトル以上、累計で数百万部が刊行されており、この「仁吉の巻」は、もうひとつの「佐助の巻」と2巻で1セットになっている。
「仁吉の巻」には高橋留美子、みもり、えすとえむ、紗久楽さわ、鈴木志保、吉川景都、岩岡ヒサエが、「佐助の巻」には萩尾望都、雲田はるこ、つばな、村上たかし、上野顕太郎、安田弘之、柴田ゆうがそれぞれ参加している。

どちらの巻も、元の作品ののんびりした雰囲気を活かした佳作ぞろい。「仁吉の巻」ではとりわけ、えすとえむ「月に妖」、紗久楽さわ「きみめぐり」、鈴木志保「ドリフのゆうれい」が印象的だ。

千年を超えて生き続ける大妖怪「皮衣様」を祖母に持つ、妖怪クオーターでありながら病弱な「若だんな」と、その兄のような立場の仁吉と佐助。
仁吉は白沢(はくたく)、佐助はかつて弘法大師が描いた犬神と、どちらも本性は強力な妖怪なのだが、若だんなには甘い、という設定が楽しい。

「月に妖」では、病に臥せっているのに「月を見たい」とわがままをいい出した若だんなと、体に障るからとしぶる仁吉と佐助のやりとりが、静かにあたたかく、優しく描かれる。
「きみめぐり」は、またしても病に臥せる若だんな(だいたいいつも若だんなは臥せっているのだが)のもとへ、薬の神様である「神農」が訪れる話。
「ドリフのゆうれい」は、鈴木志保ならではの、空白を活かした切れ味鋭い絵柄で、使い古されたモノが妖気を帯びて「つくも神」になる様子を描く。

いずれも単なる歴史ものや怪奇ものにおさまらない、悠然とした雰囲気があり、和菓子とお茶を用意して、縁側や炬燵で楽しみたくなるような作品。
原作ファンだけでなく、気のきいた商品が好きなマンガ好きにもぜひオススメしたい。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn
Twitter:@n11books

単行本情報

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