『お前はまだグンマを知らない』第2巻
井田ヒロト 新潮社 \500+税
(2014年8月9日発売)
キャッチコピーは「心にググっと群馬県」。(物理的な意味で)日本の中心である群馬県≒グンマ県の真実を描いた衝撃の問題作の第2巻。
チバからグンマに引っ越すこととなった高校生・神月の前に立ちはだかるのは超排他的なグンマ県民たち。
グンマを代表する芸能人・井森美幸もテレビでたびたび紹介している「上毛かるた」は、グンマ愛を試すための格好のツール。「つる舞う形の」と上の句を振られたら即座に「群馬県」と答えられなければ、余所者のレッテルを貼られることになるのだ。
そんな“地球上唯一残された秘境”に迷い込んでしまった神月は、グンマのソウルフード「焼きまんじゅう」こそあっさり受け入れたもののピンチの連続。ついには最大のライバル県、トチギのスパイに拉致されて!?
2巻では「かんぴょう」を武器にグンマを挑発するトチギとの(不毛な)抗争が繰り広げられる。はたして神月の命運やいかに!
当然のことながら作者の井田ヒロトは高崎市在住の群馬県民。ところが井田はもともと神奈川県出身であり、群馬在住は中学1年生からなのだ。
「上毛かるた」の話題についていけなかったのは、本人が第1巻の巻末で語っていいるように、ほかでもない作者自身なのである。
思春期の井田は精一杯、群馬に溶け込む努力をしてきたのだろう。そしていつしか富岡製糸場、上州名物からっ風、ひも川うどん、ぐんまちゃん、ダルマ、みそパン、チョコボール向井……。群馬にまつわるあらゆる人・物・自然現象を偏愛するようになったと推測される。
その愛情を前作『誰かカフカを守って』のコミックス・おまけページに叩きつけたところ大反響を呼んでしまい、『お前はまだグンマを知らない』の連載に至るまでとなったのだ。本作の原点ともいえるおまけページ『一分間だけ、群馬を語る』は、現在WEBサイト「くらげバンチ」で読むことができる。ぜひそのゆがんだ愛情をたしかめてほしい。
ちなみに1巻の冒頭で群馬県は「2012年県別魅力度ランキング」にて最下位とあるが、2013年度の報告では3ランクアップの44位に! この調子なら16万部突破という異例の大ヒットを飛ばした本作のおかげで、2014年度の報告ではさらに上を目指せるかもしれない。
ただし栃木県も前年の44位から3ランクアップの41位だった。誰も気にしない40位台での泥仕合はしばらく続きそうですね☆
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」