日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『黒街』
『黒街』 第3巻
小池ノクト 秋田書店 ¥600+税
(2017年1月6日発売)
『蜜の島』、『マッシュルーム』などの小池ノクトの不条理ホラーコメディ完結巻。
トチ狂ったマンガ(褒めてる)作品を読みたい人に強くオススメする傑作。
平凡だった筈の「黒町」に住む黒町幸一は、父親が「ふつうのサラリーマン」でいてくれないことに嫌気がさして高校へ行かなくなってしまう。
街にはゾンビがあふれるようになり、怪しい高給バイトばかりをしていた父親は、とうとう街を救済する「会社」を立ち上げる始末。
幸一の生活はどうなる……?というあらすじ。
モンスターに対して驚きはするけど、かなり平常心を保ってる世界という意味では、押切蓮介の隠れた傑作『プピポー!』を思わせる空気感。
「町の異常を外部に訴えても信じてもらえない」あたりのゾッとするようなリアリティもいい。
第2巻では後輩でヒロインの小早川さんの水着回もあった(マスクとらないけど)し、今度は新しい女子キャラも複数出てきた(パンチラもあった)し、召喚された邪神のクトゥ吉もいい感じだったのに、残念ではあるけど。町にゾンビがあふれ出した謎を追う流れが途絶して、いつの間にかシレッと読み切り連作スタイルになり、とうとうすべてを投げ捨てるようなかたちで完結。
しかし、それが作品の内容とあんまり齟齬をきたしていないのは、さすが。
詰めこみ感、スピード感、そして軸のブレ(繰り返しますが、本当に褒めてます)!
いい話風なのに「それでいいのか?」というツッコミを誘うある意味で王道な結末!
単に綺麗にまとまった佳作よりも、ゾクゾクするようなリアルなスリルを感じる。
ありがとう! 大好きなヤケクソ感でした! またこの路線の作品、描いてほしいなあ。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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