365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
2月2日は『徹子の部屋』が始まった日。本日読むべきマンガは……。
『逃げるは恥だが役に立つ』 第1巻
海野つなみ 講談社 ¥429+税
(2014年6月13日発売)
1976年2月2日、日本教育テレビ(NETテレビ。現・テレビ朝日)にて、お昼のトーク帯番組『徹子の部屋』の放映が始まっている。
いまや大御所タレントの黒柳徹子が司会を務める、国民的番組だ。ちなみに第1回のゲストは、今は亡き名俳優の森繁久彌で、いきなり黒柳徹子の胸を触った(!)ことが伝説になっている。
それから40年を超えて、平日のお昼の顔として放映し続け(2017年2月現在)ギネス記録にも認定されているほどで、すでに日常にとけこんでおり、出演するのが夢だった、と語るゲストも多い。
派遣切りにあって無職の25歳、森山みくりもこの番組に出演を果たした。ただし、「妄想」のなかで、なのだが。
彼女は『逃げるは恥だが役に立つ』、通称「逃げ恥」のヒロインである。
新垣結衣がみくりを演じたドラマ版の大ヒットは記憶に新しく、エンディングの「恋ダンス」は社会現象にまでなった。
しかし、それだけでなく、みくりが脳内で繰り広げる、やたらディティールが凝った妄想も見どころだった。
原作でも、みくりの妄想が随所で繰り広げられるが、しょっぱなに登場するのが『徹子の部屋』である。さすがに明記はしてないが、司会者の「たまねぎ頭」や上品なセットは、それ以外のなにものでもない。
高学歴女性だが就職で報われないという、みくりの行きづまった身の上は「よくあること」で片づけられそうだが、独特のテーマソングに乗って、あのやたら情報量の多い語り口にて話を引き出されると、奥が深そうに感じられるのが不思議である。
ドラマ版では残念ながらこの『徹子の部屋』は未登場であったが、ジャンル問わずさまざまな妄想シーンがちりばめられ、視聴者を大いにわかせて原作の妙味をきわだたせてくれた。
ある程度の年齢になれば「イケメン男性に理由もなく好かれる」系ではなく、平凡な日々に彩りを添えるために「自分が輝き、社会的に注目される」系の妄想を楽しむ女性は、みくりだけではなく、けっこういるのではないか。
そんなみくりだからこそ、家事代行をきっかけに出会い、契約結婚することになった相手、36歳・高齢童貞である津崎平匡の魅力にも気づけた……ともいえる。
妄想で鍛えた(?)シミュレーション能力が高く、発想力・行動力も持つみくりは、平匡との偽装夫婦生活をきっかけに、家庭・社会の問題に深く斬りこんでいく。
そのなかで、自分のビジョンも明らかになったみくりなら、リアルなほうでの『徹子の部屋』出演もありえそう!? そのためにも、この番組ができるだけ長く続いてほしいものだ。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。