このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

『恐之本』 第10巻 高港基資 【日刊マンガガイド】

2017/02/09


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『恐之本』


kyounohon_s10

『恐之本』 第10巻
高港基資 少年画報社 ¥680+税
(2017年1月23日発売)


都市怪談系のホラーは、たとえば文章界なら平山夢明や黒木あるじ等の作家が分野をリードしているが、マンガ界でも「この人!」といえる実力者が何人かいる。

そのひとりが、高港基資である。 商業デビューからは27年、ホラー方面へ入ってからも20年近いキャリアがあるベテラン作家で、いまも高いクオリティと安定感を維持して活躍中の人物だ。

『恐之本』は、そんな高港氏の過去作~近作をまとめた傑作選のシリーズタイトルである。
高港氏は長らくコンビニ売りの本に読み切りを描き下ろすスタイルを主としてきたので、読み逃がすと補完が難しい作品もあったが、当セレクションでかなりの範囲がカバーされており、新規読者にも、そして長年のファンにもうれしい単行本化となっている。

その『恐之本』が、今年に入ってとうとう最終巻「充」(第10巻)の刊行を迎えた。

同窓会に行くからすぐ100キロ痩せさせろと美容整形外科医に無茶な要求をして断られた女の恨みが肉体をとびこえる「蛹(さなぎ)女」。
古いお城の人柱の幻影にとりつかれて命を脅かされる娘の身の上に、いつもぼうっとして頼りなくみえていた父親との絆が光る「人柱」。
バラバラ殺人被害者の怨霊が人間から頭と手首を奪おうとつきまとってくる「首」。
田舎のひいひいおじいちゃんから本当とも嘘ともつかない出生の秘密を告げられる少女の心持ちを余韻たっぷりにとらえた「曾々祖父」。

などなど、既存作8本に新作1本を加えた計9本が収録されている。

『恐之本』シリーズ全体を見わたして感じ入るのは、ホラーを表現するアングルに多彩な引き出しがある点だ。
ひたすらオバケが怖い話、肉体的にイタい話、不思議な出来事をきっかけに生きた人間同士の関係性が掘り下げられるイイ話、こわがるべきなのかどうかさえ理解がおよばない複雑なアヤのある話……読み切りごとにどこから刺しこまれるかわからない。
シリーズ第8巻『恐之本 八つ目』には、福島の被災地や被災者にまつわるデリケートな題材を誠実に扱った一編もあり、ときとして社会的・時事的なかおりを帯びることさえある。
だから「この作家ならこうくるだろう」という予測がきかないため、常に緊張感をもってページをめくることができるのだ。
そういう意味では、短編の名手であると同時に、短編“集”にもマッチした作家性といえるかもしれない。

単行本未収録作はまだあるので、今後それらを含めた新たな作品集が出たらいいなぁ~、とファンとしての望みを記して今回のレビューをしめくくろう。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

  • 『恐之本』 第10巻 Amazonで購入
  • 『恐之本』 第1巻 Amazonで購入
  • 『恐之本』 第2巻 Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング