日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『赤異本』
『赤異本』
外薗昌也(作) 高港基資(画) 社 ¥574+税
(2016年8月8日発売)
猟奇的な殺人鬼が住む島に閉じ込められてしまった状況下でのサバイバルを描く『鬼畜島』で世間を震撼させているホラー漫画家・外薗昌也。
彼がこれまでに蒐集してきた実話怪談のなかから、とっておきのものを選りすぐり、身の毛もよだつようなヴィジュアルとともにまとめたのが、この『赤異本』である。
本作は6つの怪談話から構成されるオムニバス形式の作品だ。
登場人物たちは、「本当の話」だということを宣誓し、自らの体験を語り始める。
周囲には、火がついた無数のロウソク。そう、彼らは百物語をしているのだ。
語られるのは、どれもあまり聞いたことがないような話ばかり。
ともすれば、怪談話というのは聞きおぼえのある内容になってしまうことも多いが、本作においてはその心配は無用。先が読めない恐ろしい話が、これでもか! と読者を恐怖の底へと引きずりこむ。
玄関に大木が立ちはだかる謎の家で拾った鏡が招く恐怖、AV業界に長らく勤めている男が背負う秘密、とある理由から生きているのに“死んでいる”少女……。どれも一級品の怪談だ。
特に恐ろしかったのは、最終話である「めまし」。
ホラー作家であるKという女性が体験した恐怖を、同業者・岡園が語りだすのだが、異形に対する畏怖、そして人間が持つおぞましさがみごとに融合されており、最後には余韻のように謎を残す。
はたして、「めまし」とはいったいなんなのか。
作中では明らかにされていないため、読後に思わず検索をしてしまったほどだ。
しかし、微妙に言葉を変えてあるのか、明確な答えはヒットしなかった……。
でもまぁ、世のなかには知らなくていいこともたくさんある。
外薗さんが集めた怪談のうわべをなぞり怖がるくらいが、ちょうどいいのかもしれない。
真相を知ってしまったら、後戻りできないだろうから……。
<文・五十嵐 大>
83年生まれの、引きこもり系フリーライター。デスゲーム系やバトルもの、胸キュン必至の恋愛マンガやBLまで嗜む、マンガ好きです。マイブームは、マンガ飯の再現。